【図解】人的資本経営の導入を阻む3つの壁と克服するためのヒント

「人材こそが企業の最大の資産」ということは、ずっと昔から言われています。でも、実際に人的資本経営を導入し、成果を上げている企業はまだまだ少ないです。

と言うのは、人的資本経営を取り入れるにあたって、“3つの壁”が存在するからです。この3つの壁を意識せずに、人的資本経営を実践しようとしてもムリなのです。

そこで本記事では、人的資本経営の導入を阻む3つの壁とその克服のヒントについて解説します。

1. 人的資本経営とは?企業の持続的成長に不可欠な経営手法

まず、人的資本経営とは何でしょうか?

経済産業省によると、「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」と定義されています。

つまり、人材を単なるコストではなく、投資対象と考え、その能力を最大限に引き出すことが、企業の持続的成長には不可欠だということです。

人的資本経営の重要性は、近年ますます高まっています。

と言うのも、AIやロボットの普及により、単純作業は機械に代替されつつあるからです。では、人間にしかできない価値とは何か?

それは、一言で言うと、創造性、問題解決力、コミュニケーション能力など、高度な知的能力です。

これからの時代に求められるのは、そうした能力を備えた人材を育て、活かすことなのです。

次章では、人的資本経営の導入を阻む3つの壁について、具体的に解説します。

あなたの会社でも、こうした壁にぶつかっている可能性がとても高いです。それでは、壁その1から見ていきましょう。

2. 壁その1:意識改革の壁

人的資本経営の導入を阻む壁その1は、人材を「コスト」ではなく「資本」と捉える意識改革の難しさです。

2-1. あなたは従来の人材観からの脱却できますか?

多くの企業では、人件費は削減すべき対象と見なされがちです。

新規採用を控えたり、教育研修費を削ったりするのは、その典型例と言えるでしょう。

しかし、こうした「人材=コスト」の発想では、人的資本経営の実現できません。つまり、人的資本経営の莫大な恩恵を得られないわけです。

では、どうすれば「人材=資産」の発想に転換できるのでしょうか?

そのためには、「人材とは何か?」について徹底的に考え抜く必要があります。

それをしないと、「優秀な人材は自然と育つ」「人は替えがきく」といった従来の間違った考え方を持ち続けることになるわけです。

優秀な人材を育てるには、戦略的な育成プログラムが不可欠です。勝手に人が望み通り育つことはありません。寝て起きたら勝手に手元に100万円あることはまずないように。

それに、従業員は替えが効くパーツではありません。一人一人違う個性、能力、性格があります。

なので一人ひとりの才能を見極め、適材適所で活躍してもらうことが重要です。

2-2. トップの意識改革が最優先

組織全体で人材観を変えていくには、まずトップの意識変革が先です。

つまりは、経営者自らが「人材は資産であること」「人材育成に投資すること」を宣言するわけです。

「いや、うちはやっている」と思うかもしれませんが、その意図は明確に伝わっているでしょうか?

もし伝わってなければ、言ってないのと同じです。示してないのと同じです。

その上で、現場の声に耳を傾け、人材の力を引き出すためのアイデアを積極的に取り入れることも重要でしょう。

トップがリーダーシップを発揮することで、組織全体の意識改革につなげることができるのです。

次章では、人的資本経営の効果測定の壁について解説します。数字に表れにくい人材の価値を、どのように可視化するのでしょうか?

3. 壁その2:効果測定の壁

人的資本経営の導入を阻む壁その2は、その効果測定の壁です。

設備投資と違い、人材への投資は、すぐに数字に表れにくいですよね。教育研修を実施しても、その効果が業績に反映されるまでには時間がかかります。

また、人材の能力やモチベーションは、数値化が難しい側面もあります。こうした事情から、人的資本経営の効果測定は一筋縄ではいかないのが実情なのです。

3-1. 適切な評価指標の設定と活用方法

では、人的資本経営の効果をどのように測定すればよいのでしょうか?

大切なのは、自社の目指す姿に合った評価指標を具体化する必要があります。この時点で、目的をあいまいすると、まず評価は難しくなります。

なので例えば、対策の目的は「イノベーション創出」と決めるわけです。そうすることで、特許出願数や新製品の売上高など、具体的な指標が定められるようになります。

他に、もし目的が「生産性向上」なら、一人当たりの売上高や労働時間当たりの付加価値額などが指標になります。

評価指標を設定したら、それを適切に活用することが重要です。つまり、指標の変化を定期的にモニタリングし、施策の効果を検証することです。

その上で、PDCAサイクルを回し、より効果的な施策につなげていく。こうした地道な取り組みの積み重ねが、人的資本経営の成果を高めるのです。

3-2. 定性的な効果の見える化

数値化が難しい定性的な効果も、工夫次第で「見える化」できます。定性的な効果とは、例えば、幸福度とか、エンゲージメントとかですね。

こういった定性的なものに関しては、アンケートやサーベイで見える化できます。

ただ、この場合も目的を具体的にしてください。

例えば、「何となく社員のメンタルを見えるかしたい」という感じでは、何をどう見える化すればいいか分かりませんよね?

従業員満足度なのか、エンゲージメントなのか、心理的安全性なのか、ストレス度なのか、ウェルビーイングなのか・・、分からないわけです。

なので、具体的に見える化したいものを絞り込みましょう。

また、面談を通じて、一人ひとりの成長実感やキャリアビジョンを確認するのもアイディアです。

こうした定性的なデータを定量データと組み合わせることで、人的資本経営の多面的な効果を捉えることができるでしょう。

効果測定の壁を乗り越えるには、自社に合った評価指標の設定と、定性的な効果の見える化が欠かせません。

次章では、時間の壁について解説します。

4. 壁その3:時間の壁

人的資本経営の導入を阻む最後の壁は、組織文化や風土づくりにかかる時間の壁です。

人は誰しも短期的な物事に目が行きがちになります。そうすると、将来手に入るはずの大きな利益を撮り逃してしまうことがよくあるわけです。

このように、人的資本経営は人間の本能との戦いでもあります。

4-1. トップのリーダーシップとボトムアップの両輪で

組織文化の変革には、トップのリーダーシップが何にも優先されます。

経営者自らが「人材第一」の価値観を明示し、それを態度で示していく必要があるわけです。

その上で、現場の従業員の主体的な行動を促していきます。

具体的には、一人ひとりが「人材第一」の文化づくりに参画しているという意識を持てるよう、ボトムアップの取り組みにも力を入れていきます。

こんな感じで、トップダウンとボトムアップの両輪を構築することで、時間の壁を薄くすることができます。

4-2. 小さな成功体験の共有と積み重ね

組織文化の変革は、どうしても時間がかかります。大切なのは、小さな成功体験を共有し、積み重ねていくことです。

これって、まさしく、私たち個々人の目標達成と同じなんですね。

つまり、

  1. 目標を定める
  2. それに対する前向き行動を起こす
  3. 前向き行動を喜ぶ(報酬)
  4. 前向き行動が強化される(正の強化)
  5. また前向き行動を起こす(習慣化)

という流れを作っていく必要があるわけです。行動が習慣にさえなってしまえば、自動的に人的資本経営が推進されていくわけです。

最後に、3つの壁を乗り越えるためのヒントを、先進企業の事例から学んでみましょう。

5. 3つの壁を乗り越えるためのヒント:先進企業の成功事例に学ぶ

ここまで、人的資本経営の導入を阻む3つの壁について解説してきました。

  1. 意識改革の壁
  2. 効果測定の壁
  3. 時間の壁

こうした壁を乗り越えるためのヒントを、先進企業の成功事例から学んでみましょう。

5-1. 花王:「OKR」で個人と組織の目標をリンク

花王は、「OKR(Objectives and Key Results)」という目標管理手法を導入することで、個人と組織の目標をリンクさせています。

各従業員が自身の目標を設定し、その達成度を定期的に上司と話し合うようなしくみです。

このプロセスを通じて、一人ひとりの成長が組織の目標達成につながっていくわけです(出典:『人材開発白書2022』)。

会社からではなく、自分からスタートした目標なので、社員さんもモチベーションが高いわけです。

5-2. サイボウズ:「100人100通りの働き方」で多様性を尊重

サイボウズは、「100人100通りの働き方」を掲げ、従業員の多様性を尊重する文化を大切にしています。社員さんはこう語っています。

100人100通りの働き方っていう考え方の根本はすでに多様なメンバーが集まっているという前提なんです。

男、女とか日本国籍、アメリカ国籍とか関係なく、その一個人という時点で多様であり、誰も同じ価値観ではないと思っています。

そのため、サイボウズではメンバー1人ひとりが違うことを前提と考えて、「100人いれば100通りの働き方があっていいんじゃない」という発想。

時間や場所を選ばないそれぞれが望むような働き方を実現できるようにしています。

サイボウズブログ記事より

出社時間や勤務場所を自由に選べる「スーパーフレックス制度」や、副業を積極的に奨励する制度など、一人ひとりが自分らしく働ける環境を整備しています。

その結果、離職率が下がり、従業員のエンゲージメントが高まり、イノベーションが次々と生まれています。

サイボウズのブログより引用

6. まとめ

人的資本経営の導入には、人材観の転換、効果測定の工夫、組織文化づくりなど、多くの難しさがあるのも事実です。

しかし、先進企業の成功事例が示すように、これらの壁を乗り越えることで、企業の持続的成長を実現することができます。

トップのリーダーシップと現場社員の意識改革を両輪で進め、自社の強みを活かした人材育成に取り組むことが重要です。人的資本経営の導入に踏み出す第一歩を、ぜひ今日から始めてみませんか?

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