From:堀口寿人
MMPI心理検査を勉強中
ストレスとは、簡単に言うと、「体が緊張しているときの心理状態」のことだ。
ストレスは、一般的には悩みと同じような意味で使われる。だから、ストレスがたまるという表現が一般的だ。
でも、実際はストレスはたまるというより、「心理的にずっとピリピリしている状態」というような意味合いの方が正しい。
もっと言うと、身体の緊張が高まっているときの心理状態が、俗に言うストレスが溜まっている状態だ。
こんな感じで、ストレスは身体の緊張とそのときの心理状態に関係している。そして、ストレスには次のような段階がある。
ストレスの段階
ストレス1段階目:警告反応期
これは、ストレスの一段階目だ。最初にストレスになる対象に出会ったときのストレス段階だ。
例えば、あなたが職場で初対面の同僚と出会ったときのことをイメージして欲しい。
あなたとその同僚は初対面なので、最初はどんな人か分からない。だから、それとなく仲良く話すだろう。
でも、だんだん仲良くなるうちに、あなたは気づく。
「あれっ何かこの人、自分と性格合わない?ちょっとウザいかも?」
いったんそう思ってしまうと、だんだんその人はウザい人に思えてくる。そして、その同僚に会うたびに、ちょっとした緊張感が生まれるようになるわけだ。
ただ、まだ最初のころは、その緊張感はそれほど気にならない。これが警告反応期の状態だ。
ストレス2段階目:抵抗期
警告反応期には、着々とストレスのメーターが上がっていく。要するに、緊張状態が増していくわけだ。
そうなると、あるとき、「もうこれ以上上がらない!」という所に行き着く。ストレス上限いっぱいという感じだ。
またさっきの例でいうと、同僚といるとマックス最大のストレスを感じる状態だ。
ただ、キレたり、ウザいと言ってしまえば、同じ職場なので、その後すごく働きづらくなる。
だから、やっとやっとで耐えている状態だ。これが抵抗期だ。
ストレス3段階目:疲労期
そんな、抵抗もいつまでも持つものじゃない。
あるとき爆発するときが来る。これが疲労期だ。ダムが決壊する時期だ。
さっきの例でいうと、同僚にキレたり、「ウザいんだけど!」と言ってしまうわけだ。他には、ストレスに耐え切れなくなってうつ状態になってしまう場合もある。無気力になったり、思い病になる場合もある。
ダムの決壊にもいろんな表れ方があるわけだ。
余談だけど、ストレスによって、身体に不眠とか胃潰瘍とか症状が出る心身症も、この疲労期の特徴だ。
ストレス時の身体
じゃあ、ストレスは「体が緊張しているときの心理状態」だと話したけど、「緊張している?」ってどんな状態だろうか?
それには、次の2つの神経が関係している。
交感神経
交感神経は、自律神経系の一つだ。危険な状態に出会ったときに体を緊張状態にするはたらきがある。
緊張状態ってどういうことか?
それは、色々あるんだけど、まず一つ目は循環器の機能がグンと上がる。具体的には、血圧が上がったり、心拍数が増えたり、汗が増えたり、呼吸が増えたりする。
簡単に言うと、運動するのに適した状態になるわけだ。
そしてもう一つ。栄養を消化する機能下がる。
危険なときにゆっくり飯を消化している場合じゃないわけだ。一刻も早く、戦うか、逃げるかして、安全な状況をつくらないといけない。
だから、戦ったり逃げたりするための機能が上がって、栄養を消化する機能は下がる。緊張すると腹痛を起こすのもこのためだ。
副交感神経
副交感神経も、自律神経系の一つだ。交感神経とは逆で安全なリラックスした状態で働く。
具体的な働きも、交感神経とは真逆だ。
まず、循環器の機能が下がる。具体的には、血圧が下がって、心拍数が減って、呼吸も減る。
そして、栄養の消化機能が上がる。お腹が減って、食欲が増えるわけだ。
一旦状況が落ち着いて、安全になれば、戦ったり逃げたりすることに無駄なエネルギーを使う必要がない。だから、自分のために100%エネルギーを使うわけだ。
戦国時代をイメージすると分かりやすい。
戦乱の時代は、武士がとにかく力を持っていた。作ったお米の多くは武士に優先的に分け与えられ、農民は貧しかった。
ただ、いったん天下が平定されて、世の中が平和になると、状況はガラッと変わる。
武士は無用の長物になった。代わりに力を持ったのが商人や農民だ。
江戸時代中期以降になると、武士は貧しいのが当たり前になってしまい、大名(武士のトップ)ですら商人からお金を借りていたという話だ。また、農民が武士の生活に口出しをすることもよくあったらしい。
これで言うと、
- 武士が交感神経
- 商人や農民が副交感神経
みたいなイメージだ。
2つの神経の関係性
さっきの、戦国時代の例でも分かるように、交感神経と副交感神経が同時に強くなることはない。同時に弱くなることもない。
必ず、どっちかが強ければ、どっちかが弱い拮抗した関係性だ。
簡単に言うと、歩行者信号みたいなものだ。赤が点いているとき、青は消えている。青が点いているとき、赤は消えている。両方同時に点くことも、消えることもない。
ストレス時の心
じゃあ、次にストレス時の心はどうなっているのか?
具体的に言うと、ストレスの時には、次のネガティブ3感情が生まれている。
僕たちはこれまでたくさんのネガティブ感情を感じてきた。そのたくさんのネガティブ感情も元を正せば、実は3つに分類できる。
その3つが次だ。
欲望
欲望とは「あれが欲しい。これが欲しい」と際限なくほしがる心のことだ。
このときの、欲望とは「自分さえよければいい」という生存欲に根ざしている。
僕たちが「自分さえよければいい」と考えるとき「外から入ってくるものが自分を幸せにしてくれる」という無知が働いている。
なぜ「無知」と言ったのかというと・・・
実際はそうならないからだ。いくら外から入ってくるものを増やしたところで、必ずしも僕たちは幸せにならない。
もし、外から入ってくるものが、僕たちを幸せにしてくれるのなら、過去最大級にものや情報が満たされたこの時代に、過去最大級にうつ病が多いのは説明がつかない。
つまり、いくらお金が入っても、いくら知識を得ても、いくら人から賞賛を得ても、心理状態が欲望であるかぎり絶対に幸せになれないということに、僕たちはそろそろ気づかないといけない。
繰り返すけど、幸せは外から入ってくるものじゃなく、自分自身の心がつくるわけだ。外から入ってくるものは、そのきっかけにすぎない。
シャボン玉がいっぱいに宙に浮いているのをイメージして欲しい。
「あのシャボン玉さえ手に入れられれば幸せになれる!」そう信じて、シャボン玉に手を伸ばす。
すると、シャボン玉は割れて、パッと無くなる。
「次こそは!」と、次のシャボン玉に手を伸ばす・・・
こういうことを延々に繰り返している人がいたらどうだろう??滑稽だと思わないだろうか?
でも、僕たちが外に幸せを求める行為も、これと何ら変わらない。それは幻なのだ。幻を求めれば求めるほど、逆に満たされずに苦しむことになる。
欲望グループの感情には、欲望以外にも、優越感、劣等感、偏見などがある。
怒り
怒りは、欲望が満たされなかったとき、その状況を破壊したいという心だ。だから、欲望の逆の心になる。
欲望があるとき、それは同時に怒りが生まれる可能性もあるということだ。
例えば、あなたが最近イライラしたことを思い浮かべて欲しい。
思い浮かべただろうか?
じゃあ、次に、そのイライラの裏にはどんな欲望があったか考えてみよう。必ず、何かしらの欲望が見つかるはずだ。
例えば、ノロノロ運転する車の後ろで、自分もノロノロ運転を強要されてイライラしたとしよう。
そうだとしたら、そのイライラの裏には「速く行きたい」という欲望があることが分かる。
怒りは欲望のサインだ。煙は火があることのサインのように、発熱は病気のサインのように、怒りがあるとき必ずその裏に欲望がある。
僕たちは欲望が満たされない時、次のような色んな感情を経験する。ただ、大きく分けるとこれらは全部怒りグループの感情なわけだ。
不安、恐怖、後悔、嫌悪、嫉妬、罪悪感、イライラ・・・
どれも欲望が満たされないときに感じる感情だと分かるだろう。
無知
最後は無知だ。「これも感情?」と思うかもしれないが、これも感情だ。
今、無知も含めて3つのネガティブ感情を紹介している。この3つはネガティブ感情のリーダーだ。全てのネガティブ感情はこの3つのどれかに分類される。
その3つの中でも、トップに君臨するのが、この無知だ。全て僕たちのネガティブ感情はもとを正せば無知からスタートする。
じゃあ、無知って?
その質問に答えるために、またあなたにちょっとしたイメージをして欲しいと思う。
例えば、「よくよく考えたらこうしとけばよかったな」と今になって過去の矛盾を反省することはないだろうか?
そのときちょっと考えていればうまくいったことが、そのときの自分には分からなかった経験だ。
たぶん、あなたが冷静に自己分析できる人なら山ほど見つかるはずだ。
その原因が無知だ。もちろん僕にもそう言う経験がたくさんあるから、僕もたくさんの無知の感情を持っている。
無知の本質は「分からない」ということだ。
無知があるから僕たちは
- 正しい事を間違っていると思ってしまう(「人に与えることで幸せになるなんて嘘だ」とか)
- 間違っていることを正しいと思ってしまう(「欲望が人を幸せにする」とか)
- 無益なことを有益だと思ってしまう(「パチンコすることは人生を有意義にする」とか)
- 有益なことを無益だと思ってしまう(「毎日掃除するのはバカバカしい」とか)
残念ながら、僕たちは生まれながらにして、本質的に無知だ。世の中の道理なんて何も分からずに生まれてくる。
そして、生きていく中で少しずつ必要な道理を学んでいくわけだ。生きていくのに最低限必要な道理を。だから何とか生きていける。
でも、幸せになるために必要な道理はどうだろう?
これに関しては、学ぶ場所がない。というのも、世のほとんどの人は幸せになる方法に関しては無知だからだ。みんなどうしていいか分からないわけだ。だからお互いに教え合うこともできない。
こんな感じで、とにかく「分からない」という感情が無知だ。
無知グループに所属するネガティブ感情は、焦り、眠気、混乱、慌て、怠惰(怠け)などがある。
もちろん、広い意味で言えば、全てのネガティブ感情は無知の支配下にあるわけだけど。
というわけで、3つのネガティブ感情を紹介した。僕たちがストレスを感じるとき必ず、このどれかのネガティブ感情が生まれている。
もしよければ、次にストレスを感じた時に自分の心をチェックして欲しい。分かりやすいのは怒りだ。怒りの時のストレスはチェックしやすい。
ただ、欲張っているときもストレスで心がざわついているので、ぜひチェックして欲しい。
例えば、あなたを含めて5人いて、4個しかケーキがないとしよう。5人とも絶対にケーキが食べたい。そこで、じゃんけんになった。
このとき、結構なストレスがかかっているのが想像できるだろう。
無知のときもそうだ。例えば、焦っているとき、僕たちはかなりストレスを感じている。
「何をしていいか分からずボーっとしているとき」も実際は楽じゃない。結構ストレスがかかっている。これはそのときの心の状態をチェックするとよく分かる。
まとめ
ストレスには次の3段階がある。
- 警告反応期
- 抵抗期
- 疲労期
そして、ストレス時には交感神経が活性化していて、身体全体が戦うか逃げるかといった緊迫した状態になっている。
また、ストレスのとき心にはネガティブ3感情が生まれている。ネガティブ3感情とは
- 欲望
- 怒り
- 無知
の3つだ。全てのネガティブ感情はこの3つのどれかに分類できる。