もしあなたがタレントマネジメントに関心があるとしたら、きっとあなたの会社は、これからますます良くなっていくことでしょう。
というのも、タレントマネジメントはこれから時代を生き抜くには欠かせない考え方だからです。
今回は、タレントマネジメントについて基本からしっかりとお伝えしていきます。ぜひ最後までご覧ください。
1. タレントマネジメントって?
タレントマネジメントとは要するに「社員の力を最大限に引き出して会社の成長につなげる」ための仕組みづくりのことです。
つまり、社員一人ひとりの才能を見つけ、伸ばし、活かすことで、会社全体のパフォーマンスを上げていこうという考え方なんですね。
よく「ヒト・モノ・カネ」って言いますが、これからの時代、特に大切なのは「ヒト」なんです。
優秀な人材を惹きつけ、育て、定着させること。これができるかどうかが、会社の明暗を分けると言っても過言じゃありません。
例えば、アップルやグーグルなどの一流企業。彼らに共通しているのは、徹底的に「ヒト」にフォーカスしているということです。
社員を大切にし、一人ひとりの可能性を信じて任せる。そうすることで、社員のやる気と能力を最大限に引き出しているんですね。
私たち中小企業だって、タレントマネジメントの考え方を取り入れることで、きっと変われるはず。社員を大切にし、一緒に成長する。そんな会社、魅力的だと思いませんか?
1-1. タレントマネジメントの基本的な考え方
タレントマネジメントの基本は、ズバリ3つ。
- 社員の多様な才能を発見する
- その才能を伸ばすチャンスを与える
- 会社の目標達成に向けてその才能を活かす
この3ステップをしっかりと回していくことが肝心なんです。よく「適材適所」なんて言いますが、そのためにはまず一人ひとりの才能や個性を知ることから始めないといけません。
その上で、どうやったらその才能を伸ばせるか。例えば教育だったり、チャレンジできる機会を与えたり。社員の成長を後押しするのが経営者の仕事ですよね。
そして、伸びた才能をどう会社の目標達成に活かすか?
単に社員の自己実現だけが目的じゃダメで、あくまで会社の成長につなげるという意識は常に持っておく必要があります。
1-2. タレントマネジメントに必要な4つの要素
じゃあ、具体的にタレントマネジメントを進めるには何が必要か?4つあります。
- 社員を育てるマインド
- 個々の才能を引き出すコミュニケーション
- 多様性を尊重する組織風土
- 人材育成の仕組み
まず大前提として、トップ自らが「社員を育てる」というマインドを持つことです。自分だけが偉いと思っていたら、絶対に上手くいきません。
そして、一人ひとりとしっかりコミュニケーションを取り、本音で向き合うことです。普段の何気ない会話の中から、社員の可能性や思いを感じ取る感性も必要です。
また、性別や年齢、価値観など、社員の多様性を受け入れ、活かすダイバーシティの発想も重要です。型にはまらない発想を歓迎する組織風土がイノベーションを生みます。
そして、教育制度や評価制度など、人を育てる仕組みを整えること。社員の成長を促し、そのがんばりを認め、正当に報いる。そういったプロセスをシステム化していくことが大切なんですね。
ここまで話すと、「うわー大変だな・・」と思いますよね?
でも、安心してください。何もいきなり全部やる必要はないんです。
今日から小さな一歩を踏み出せば、それが大きな変化の始まりになる。そのためのヒントを、この記事でたっぷりとお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてくださいね。
さて、次の章では、タレントマネジメントを導入することでどんなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。あなたの会社もきっと変わります!
2. タレントマネジメントの3つのメリット
前の章で、タレントマネジメントの基本的な考え方について説明しましたが、「そんなの理想論だ」「うちの会社には関係ない」なんて思っていませんか?
いえいえ、そんなことはありません。
むしろ、タレントマネジメントを知らないでいると、大きな損失を被ることになるんです。
ここからは、タレントマネジメントの「3つのメリット」を、掘り下げて解説していきますね。
2-1. 社員のエンゲージメントが高まる
タレントマネジメントの第一のメリットは、社員のエンゲージメントが高まること。エンゲージメントというと難しく聞こえるかもしれませんが、要は「仕事へのやる気や熱意」のことです。
世界的なコンサルティング会社であるギャラップ社の調査(State of the Global Workplace)によると、エンゲージメントの高い社員は、
- 生産性が21%高い
- 欠勤率が37%低い
- 離職率が25%~65%低い
という結果が出ているんです。やる気のある社員は、仕事の効率が良いだけでなく、会社への定着率も高いということ。これは企業にとって、かなりの利益になるはずです。
じゃあ、エンゲージメントを高めるには何が重要か?
それは、社員に「自分の仕事に誇りを持てる」と感じてもらうこと。
「自分の存在が認められている」「仕事を通じて成長できている」と実感できれば、自ずとやる気は上がっていくものです。
そのためには、一人ひとりの顔が見える濃密なコミュニケーションが不可欠。社員の声にしっかり耳を傾け、時にはトップ自らが褒めて伸ばすことも必要です。
研修などを通じてスキルアップのチャンスを与えるのも効果的。社員を大切にする姿勢は、必ず社員の心に響くはずです。
2-2. イノベーションが生まれやすくなる
タレントマネジメントの2つ目のメリットは、イノベーションが生まれやすくなること。社員の多様な才能を活かせば、今まで考えもしなかったようなアイデアが飛び出してくるんです。
例えば、あるIT企業では、エンジニアだけでなく営業やバックオフィスのスタッフも交えて新サービスを考えるワークショップを実施しました。普段は関わりのない部署のメンバーがアイデアを出し合うことで、ユーザー目線に立った画期的なサービスが生まれたんだとか。
こうした「共創」を生み出すには、普段から部署の垣根を越えたコミュニケーションが大切。多様なバックグラウンドを持つメンバーが交じり合うことで、新しい化学反応が起こせるんです。
また、「失敗を恐れず挑戦する」という組織の雰囲気づくりも重要。「失敗したら怒られる」なんて思ったら、誰もチャレンジしようとは思いませんよね。トライ&エラーを奨励し、小さな成功体験を積み重ねられる環境があれば、社員の創造力は自ずと高まっていくはずです。
2-3. 優秀な人材の獲得・定着につながる
タレントマネジメントの3つ目のメリットは、優秀な人材の獲得と定着につながること。人材の流動化が進む中、「人が資本」の時代と言われます。いかに優秀な人材を惹きつけ、つなぎ留められるかが、企業の競争力を大きく左右するんです。
特に、ミレニアル世代と呼ばれる若者たちは、単にお金だけでは動きません。「自分の可能性を最大限発揮できるか」「仕事を通じて成長できるか」「社会貢献性のある仕事ができるか」など、”やりがい”を求める傾向が強いんです。
そういう彼らにアピールするには、「うちは社員の育成に力を入れているよ」「チャレンジする風土があるよ」といった”見える化”が大切。採用ホームページ等で、社員の活躍ぶりをリアルに伝えることも効果的です。
また、せっかく入社した社員も、やりがいを感じられなければ簡単に辞めていってしまいます。エンゲージメントを高める取り組みは、定着率の向上にも直結するんですね。
まさにタレントマネジメントは、”人財”を最大限に生かす経営戦略そのものなのです。冒頭のA社とB社、どちらが生き残るかは明白ですよね。
ここまで3つのメリットを紹介してきましたが、言葉だけ聞いてもピンとこないかもしれません。次の章では、タレントマネジメントに取り組む際の具体的なステップを解説します。さあ、いよいよ実践編のスタートです!
3. できる経営者が実践している タレントマネジメントの進め方
さて、ここまでタレントマネジメントの考え方やメリットについてお話ししてきました。「自社でも取り組んでみたい!」と思っていただけたでしょうか。
でも、「社員一人ひとりの才能を見極めて活かすなんて、簡単に言うけど実際にはどうやって?」「うちの会社にはタレントマネジメントなんて無理かも…」なんて不安もあるかもしれませんね。
大丈夫です。私はこれまで多くの中小企業の経営者の方々とお話しする中で、誰でもできる実践的なステップを学んできました。ここからは、そのエッセンスをたっぷりとお伝えしていきますよ。
3-1. 最初の一歩は「対話」から
タレントマネジメントを始めるなら、まずは社員との「対話」から始めましょう。
と言っても、最初から難しく考える必要はありません。日頃から積極的に社員に声をかけ、雑談を交わすことから始めるのがおすすめです。
例えば、「最近どう?」「仕事で悩んでいることはある?」「プライベートではどんなことに興味があるの?」など、フランクに話しかけてみてください。
普段はなかなか聞けない社員の本音や、仕事への想い、意外な才能が見えてくるはずです。
大切なのは、相手の話に耳を傾ける姿勢。自分の考えを押し付けるのではなく、まずは相手の言葉に真摯に耳を傾けましょう。
「君はこうした方がいい」と言いたくなるかもしれませんが、ここはぐっとこらえて。自ら考え、行動できるよう、さりげなく後押しするのが上司の役目です。
こうした何気ない会話の積み重ねが、安心して本音を言い合える関係性を生むんですね。普段から社員との距離を縮めておけば、いざという時に力を発揮してくれるはずです。
3-2. 社員の声を「見える化」する
社員一人ひとりと向き合って対話を重ねたら、次は出てきた声を「見える化」しましょう。と言っても、難しく考える必要はありません。
例えば、ホワイトボードに付箋を並べて整理するのも一つの方法。誰がどんな課題を抱えていて、どんなアイデアを持っているのか、パッと見て分かるようにしておくんです。こうしたボードを皆が集まるオフィスの一角に置いておけば、自然と社員同士の会話も弾むようになりますよ。
また、社員アンケートを実施するのも効果的。「仕事の満足度は?」「上司の支援は十分?」「今後伸ばしたいスキルは?」など、切り口は様々。ポイントは、社員の生の声を数値化し、客観的に把握すること。
こうした「見える化」を進めることで、社員のニーズや課題が明確になります。組織の現状を知ることは、タレントマネジメントを進める第一歩。いきなり完璧を目指すのではなく、できるところから始めていきましょう。
3-3. 高い目標にチャレンジさせる
社員の声を引き出し、見える化ができたら、次は一人ひとりの可能性を存分に発揮できるフィールドを用意してあげましょう。
「うちの社員はまだまだ」なんて思っていませんか?
違うんです。誰だって高い目標を与えられれば、想像以上に力を発揮するものです。若手社員にも、思い切って大きな仕事を任せてみてはいかがでしょうか?
例えば、新規事業の立ち上げや、新商品の企画、大型プロジェクトのリーダーなど。
「まだ早いんじゃ…」と不安に感じるかもしれませんが、ここは思い切ってチャンスを与えることが大切です。
もちろんそのためには、練習の機会を作ったり、適切なアドバイスをしたりと、バックアップ体制を整えることが前提です。
でも、任された社員は必死になってがんばります。「自分を信頼してくれている」と感じることで、強い責任感とやる気が生まれるんです。時にはつまずくこともあるでしょう。でも、そこで得た学びは何物にも代えがたい財産になるはず。
トップが部下を信じ、高い目標にチャレンジさせる。それこそが、人を育てるリーダーシップだと、私は考えています。
さて、次は実際にタレントマネジメントに取り組み、見事に成果を上げた企業の事例をご紹介します。生き生きとした組織の姿に、私も心が躍りますよ!
4. 成功事例に学ぶタレントマネジメントのコツ
ここでは、私がこれまで取材してきた中から、タレントマネジメントを見事に成功させた企業をピックアップしてご紹介します。優れた取り組みのエッセンスを学べば、きっとヒントになるはずですよ。
4-1. 事例①:毎日の「ほめカード」で社員のやる気を引き出すK社
最初にご紹介するのは、東京都内で印刷業を営むK社。社員数約80名の会社です。
社長の山田さんは以前、「うちの社員はやる気がない」と嘆いていました。業績も伸び悩み、職場は活気がない。「このままではマズい」と危機感を抱いた山田さんは、思い切った施策を打ち出します。それが毎日の「ほめカード」だったのです。
毎朝の朝礼で、必ず誰かをほめる。業務で頑張ったこと、普段の思いやりのある行動など、些細なことでも構いません。ほめた相手には、そのエピソードが書かれた「ほめカード」を手渡します。
最初は「何だこれ?」と戸惑っていた社員たちも、カードをもらうのが嬉しくなり、「自分もほめてもらえるように頑張ろう」と、前向きな行動が生まれるようになったそうです。
こうした「ほめる文化」の醸成は、並大抵のことではできません。トップ自らが率先して部下をほめ、その背中を見せ続けることで初めて根付くものだと、山田さんは言います。
「ほめる」という小さな行為の積み重ねが、社員のエンゲージメントを高め、組織を活性化させる。K社の取り組みは、タレントマネジメントの本質を突いていると私は感じています。
4-2. 事例②:「プチ転職」で社員の可能性を引き出すT社
次は、関西を中心にスーパーマーケットを展開するT社の事例です。
T社では以前、バイヤーをしていた山本さんが今は商品開発部長。接客が得意だった鈴木さんは、CS推進部でマネジャーを務めています。
同じ会社なのに、まるで別の会社で働いているみたい。実はこれ、同社の「プチ転職」制度の賜物なんです。
「プチ転職」とは、社内の別の職種に挑戦できる仕組み。希望者は「なぜその仕事をしたいのか」「自分の強みをどう活かせるか」などをエントリーシートに書いて提出。選ばれた社員は、約半年間他部署で働くことができるんです。
これが社員のモチベーションアップに大きな効果を発揮。「自分の可能性を試してみたい」「新しいことにチャレンジしたい」そんな意欲が社内に広がっているんだとか。
また、他部署を経験することで、組織を俯瞰的に見る視点が養われます。
営業部門の苦労が分かれば、より良い商品を作ろうと開発に力が入りますよね。結果として、部署間の協力体制も強化されているそうです。
こうした異動のローテーションは、大企業ではよく見られる手法ですが、中小企業でもフレキシブルに対応できるのがポイント。
まずは「プチ転職」という形で、小さく始められることがT社の成功の秘訣かもしれません。
タレントマネジメントはトップダウンで進めるものと思われがちですが、実は社員の自主性を引き出すことこそ重要。
一人ひとりの「やりたい」という意欲に応える仕組みを作れるかどうかが、カギを握っているのです。
次章では、せっかく始めたタレントマネジメントを形骸化させないコツについてお話しします。輝かしい成功事例の一方で、落とし穴に嵌ってしまうケースもなくはないのです。
5. 9割の会社がハマりがちなタレントマネジメントの落とし穴
先ほど、タレントマネジメントで成果を上げている企業の事例をご紹介しましたが、「自社でもすぐにでも実践したい!」と意欲満々の経営者の方も多いのではないでしょうか。
でも、ちょっと待ってください。せっかく始めるタレントマネジメントですから、しっかりとした準備が必要です。残念ながら、私の取材の中では、こんな落とし穴にはまってしまった企業もありました。
ここからは、タレントマネジメント導入の際に気をつけるべき3つのポイントについて、お話ししていきますね。
5-1. 「制度ありき」になっていないか
まず一つ目の落とし穴が、「制度ありき」になってしまうこと。
例えば、人事評価制度や教育研修制度などを新たに導入すること自体が目的化してしまい、肝心の社員の成長が置き去りになってしまうのです。
こういうケースに陥るのは、往々にして「他社がやっているから」「世間でこういう制度が流行っているから」と、外部環境に流されて安易に取り入れてしまうから。でも、制度はあくまで手段の一つでしかありません。
大切なのは、自社の課題は何で、どんな人材を育てたいのかというビジョンを明確にすること。「うちの会社は現場力が弱い。だからこそ、若手を早くから鍛え上げたい」といった具体的な課題意識があれば、おのずと必要な施策も見えてくるはずです。
まずはしっかりと自社の「人材育成の方針」を固めることが肝要だと、私は考えています。
5-2. 形だけの「管理職教育」になっていないか
二つ目の落とし穴が、管理職教育が形骸化してしまうこと。
確かに、管理職の意識改革は重要です。部下の才能を引き出すには、上司の適切な関わり方が不可欠だからです。
よくある光景が、外部講師を招いての管理職研修。「部下とのコミュニケーション術」だとか「メンバーの育成方法」だとか、正しいことを一方的に教え込まれるのですが…。
現場に戻った途端に、元の木阿弥。「研修を受けたけど、結局何も変わらなかった」なんてことになりかねません。
大切なのは、机上の空論ではなく、日々の実践の中で「気づき」を得られる学びの場を作ること。
例えば、部下との1on1ミーティングの場で、実際に起こった成功事例や失敗事例を出し合って、ロールプレイングで解決策を考えてみる。
あるいは、経営層も交えて普段言えないことを本音で語り合う場を設ける。そうした双方向のコミュニケーションの中で、管理職一人ひとりが自ら考え、腹落ちしていく。
これこそが、真の意識改革につながるのだと、私は考えています。
5-3. 社員を「モノ」ではなく「ヒト」と捉えているか
最後の落とし穴が、社員を「モノ」のように扱ってしまうこと。
例えば、人事データの管理に力を入れるあまり、「スキルA、適性B、ポテンシャルC」と、まるで社員を数値化して分類しようとする。
確かに人事が頭の中で人材をシミュレーションできるのは重要ですが、社員はあくまで「ヒト」。生身の人間なのです。
性格や価値観、プライベートな事情など、データには表れない部分を理解しようと努めること。些細な変化に気づけるアンテナを持つこと。
社員の言葉や表情、しぐさから、本当の想いを汲み取る力が、これからの人事には求められるのではないでしょうか。
そのためには、人事と現場の壁をなくし、日頃から社員との接点を持つことが何より大切です。
まとめ
確かに、タレントマネジメントの導入は、正直そう簡単ではありません。トップの強い決意はもちろん、現場の巻き込み方、人事の意識改革など、地道な取り組みの積み重ねが必要不可欠です。
でも、だからこそ面白い。タレントマネジメントは、単なる人事施策ではありません。「ヒトを通じて組織を変える」経営そのものなのです。
ここまでお読みになったあなたなら、必ずや成功させられるはずです。