人時生産性は企業の競争力を左右する重要な指標です。しかし、業界によってその特徴や改善のポイントは全然違います。
製造業やサービス業、IT業界、建設業界など、それぞれの業界で求められる人時生産性の在り方とは？
本記事では、業界別の人時生産性の違いを徹底的に分析し、各業界における改善のヒントを探ります。
ご自身の業界と全く同じものがないとしても、近いものをぜひ参考にしてみて下さい。
第1章：人時生産性とは？その重要性と計算方法を解説
人時生産性は、従業員1人が1時間働いたときに生み出す付加価値の大きさを示す指標です。
つまり、人時生産性が高いほど、従業員の労働時間に対する収益性が高いということです。
あなたの会社の競争力を高めるには、人時生産性を高める必要があります。
人件費は企業の支出の中で大きな割合を占めますから、従業員1人ひとりが効率的に働き、高い付加価値を生み出すことが重要なのです。
では、人時生産性はどのように計算するのでしょうか？基本的な計算式は以下の通りです。
粗利は、売上高から商品の仕入れ値（商品原価）を引いたものです。例えば、100円で仕入れたお菓子を150円で売ったとすると、粗利は50円になります。
総労働時間とは、ある期間（通常は1年間）に従業員全員が実際に働いた時間の合計のことです。具体的には、次のように計算します。
総労働時間 ＝ 従業員数 × 1人あたりの平均年間労働時間
人時生産性が大事な理由は、企業の収益性と直結しているからです。1人1人が単位時間あたりに生み出す利益が大きいということですから。
でも、多くの企業では、人時生産性の測定すら行われていません。
あなたの会社はどうですか？
もしかしたら、知らず知らずのうちに、人時生産性が下がっているかもしれません。それは、まるで病気の症状に気づかず、放置しているようなものです。
その辺りを念頭に置いて、次の章から、製造業界における人時生産性の特徴と改善ポイントを見ていきましょう。
第2章：製造業界の人時生産性 – 自動化と効率化が鍵を握る
製造業は、人時生産性の向上が叫ばれている最前線と言えるでしょう。グローバル競争が激化する中、いかに効率的にモノを作れるかが勝負の分かれ目です。
製造業の人時生産性向上には、自動化と効率化が鍵を握ります。
2-1. 自動化で人時生産性を飛躍的に向上
製造ラインの自動化は、人時生産性向上に大きく貢献します。ロボットや自動機械を導入することで、人手に頼っていた作業を機械に任せられるからです。
例えば、自動車業界では、溶接や塗装の工程を高度に自動化することで、飛躍的な生産性向上を実現しています。
2-2. 効率化のポイントは作業工程の見直し
自動化だけでなく、作業工程の効率化も重要です。ムダな動きや待ち時間を減らし、一連の作業の流れを最適化することで、人時生産性は大きく改善します。
例えば、トヨタのカンバン方式は、在庫の最小化と生産の平準化を実現し、高い生産性を生み出しています。
2-3. データ活用で人時生産性をさらに引き上げる
IoTやAIを活用したデータ分析は、人時生産性向上の切り札となるでしょう。
まず、IoTによって、作業現場からリアルタイムにデータを収集できるようになります。
例えば、機械の稼働状況や製品の品質などのデータを、センサーを使って自動的に収集することができます。
そして、集めたデータをAIで分析することで、今まで見えなかった改善のポイントが明らかになります。
たとえば、ある作業工程が特にムダが多く、ボトルネックになっていることがデータ分析からわかったとします。
その工程を自動化したり、作業手順を見直したりすることで、大幅な生産性の向上が見込めるかもしれません。
あるいは、作業者ごとの生産性のバラつきが見えてくるかもしれません。
生産性の高い作業者のノウハウを標準化し、全体に展開することで、チーム全体のパフォーマンスを引き上げることができるでしょう。
さらに、AIによる需要予測と連動させることで、受注に合わせた最適な生産計画を立てられるようになります。
必要なときに必要なだけ生産することで、ムダを削減し、生産性を高めることができるです。
ここで重要なのは、データ分析の結果を実際の改善アクションに落とし込むことです。
せっかく貴重なデータが手に入っても、それを具体的な行動に結びつけなければ、何も変わりません。
経営者には、現場の声に耳を傾け、データに基づいて迅速に意思決定を下すリーダーシップが求められます。
製造業の人時生産性向上は、自動化、効率化、データ活用が三位一体となって進みます。
次章では、一転してサービス業界の人時生産性について見ていきます。モノを作る製造業とは異なる、サービス業ならではの人時生産性向上の秘訣とは？
第3章：サービス業界の人時生産性 – 顧客満足度と質の向上が勝負
サービス業の人時生産性向上は、製造業とは違ったアプローチが必要です。サービスの質と顧客満足度が収益に直結するからです。
サービス業が人時生産性を高めるには、顧客価値の創造と業務の効率化の両立が欠かせません。
3-1. サービス業における人時生産性の源泉
サービス業におけるサービス業における人時生産性の源泉は、ずばり顧客満足度です。
満足度の高い顧客は、リピート購入やクチコミで新規顧客を呼び込んでくれるからです。
ですので、従業員1人ひとりが、質の高いサービスを提供できる環境を整えることが重要です。
3-2. 業務の標準化と効率化で生産性を向上
サービス業でも、業務の標準化と効率化は人時生産性向上に有効です。マニュアルの整備や業務フローの見直しで、ムダな作業を減らせます。
ITツールの活用も効果的です。例えば、飲食店でタブレット端末を導入し、注文から会計までを自動化する取り組みが広がっています。
3-3. 従業員のスキル向上が質の高いサービスを生む
サービス業の人時生産性は、従業員のスキルに大きく左右されます。
接客や提案力など、従業員の能力を高めることが質の高いサービスにつながります。
教育研修の充実や、優れた従業員の評価・処遇を通じて、人材の育成に力を注ぐことが求められます。
サービス業の人時生産性向上は、顧客満足度と質の追求が出発点です。ITの力を上手く活用しながら、従業員の能力開発にも余念がありません。
次章では、IT業界の人時生産性に迫ります。デジタル時代ならではの、人時生産性向上の最先端へご案内します。
第4章：IT業界の人時生産性 – 革新的なツールと柔軟な働き方が武器
IT業界は、人時生産性向上に関する最先端のフィールドです。テクノロジーの力を駆使し、高度な知的労働の効率化を追求しています。
IT業界が人時生産性を高めるカギは、革新的なツールの活用と柔軟な働き方の実現にあります。
4-1. 最新テクノロジーが人時生産性を飛躍させる
クラウド、AI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション）など、IT業界は常に最新テクノロジーを取り入れています。
| クラウド | 自分のパソコンにデータを保存するのではなく、大きなデータセンターのサーバーにデータを保存し、必要なときにインターネットを通じて利用するもの。例：Googleフォト、iCloud、dropbox |
| AI | 人工知能のこと。例：chatgpt |
| RPA | 人間がコンピュータで行う作業を自動化する技術。例えば、毎日の売上データを集計してレポートを作る作業をRPAに覚えさせることで、人間の代わりにRPAが自動的にレポートを作ってくれる。 |
これらのテクノロジーを駆使することで、従来は人手に頼っていた業務を自動化し、飛躍的な生産性向上が実現できます。
4-2. アジャイル開発で生産性と品質を両立
ソフトウェア開発の分野では、アジャイル開発が人時生産性向上に貢献しています。
アジャイル開発とは、ソフトウェアを作る新しい方法です。
昔は、ソフトウェアを作るときに、最初に全部の設計をしてから、実際のプログラムを書いていました。
でも、そうすると、最後まで作ってみないとうまく動くかどうかわからないという問題がありました。
アジャイル開発では、ソフトウェアを小さな部品に分けて、少しずつ作っていきます。そうすることで、途中で問題が見つかっても、すぐに直すことができるのです。
アジャイル開発は、従来の開発手法に比べ、短いサイクルで開発・テストを繰り返ため、ムダを削減し、品質の高いソフトウェアを素早く提供できると注目されています。
4-3. テレワークで多様な人材が活躍
IT業界は、テレワークなど柔軟な働き方も人時生産性に大きな影響を与えます。
場所や時間にとらわれない働き方は、ワークライフバランスの実現だけでなく、多様な人材の活躍にもつながります。
例えば、育児や介護などで時間や場所に制約のある人材も、リモートワークを通じて力を発揮できるのです。
IT業界の人時生産性は、テクノロジーと柔軟な働き方の相乗効果で高められています。
次章では、建設業界の人時生産性に目を向けます。伝統的な業界でありながら、変革の波に直面する建設業の人時生産性向上への道のりとは？
第5章：建設業界の人時生産性 – 技能継承とプロジェクト管理が命
建設業は、日本の基幹産業の一つです。しかし、熟練技能者の高齢化や若手の離職など、人材面での課題を抱えています。
建設業の人時生産性向上には、技能の継承とプロジェクト管理の高度化が欠かせません。
5-1. 技能継承をどうする？
建設業は、現場での職人の技能に支えられてきました。ただ、今の時代、熟練技能者の高齢化が進み、技能の継承が大きな課題となっています。
暗黙知を形式知化するマニュアル作りや、OJTの仕組み化など、技能継承の仕組み作りが急務になっています。
5-2. プロジェクト管理の質を高めて生産性を向上
建設プロジェクトは、多岐にわたる工程と関係者の調整が必要な複雑なものです。
ですので、プロジェクト管理の質を高めることで、人時生産性を高められます。
具体的に言うと、工程管理や原価管理の徹底、BIMなどのITツールの活用で、ムダを削減し、生産性を高めることが可能です。
BIM（ビルディング・インフォメーション・モデリング）は、建物の設計や建設に使われる新しい技術です。
昔は、建物の設計図は2次元の図面で描かれていました。
でも、BIMでは、コンピュータ上で3次元の建物のモデルを作ります。このモデルには、建物の形だけでなく、使う材料や設備の情報なども含まれています。
このモデルを使うことで、設計のミスを防いだり、工事の手順をシミュレーションしたりすることができるのです。
5-3. 人材育成と働き方改革も重要
建設業の人時生産性の向上には、人材育成と働き方改革も重要な鍵となります。
若手社員の教育研修の充実や、キャリアパスの明確化で、人材の定着と能力開発が図れます。
また、長時間労働の是正やワークライフバランスの実現で、働きやすい環境を整えることも人時生産性を高めるために必要です。
建設業の人時生産性向上は、伝統の継承と革新の融合がキーになります。
さて、次章では、これまで見てきた各業界の人時生産性を比較し、共通する改善ポイントを探っていきましょう。
まとめ
これまで、製造業、サービス業、IT業界、建設業界の人時生産性について見てきました。
業界ごとに特徴はありますが、人時生産性向上の視点から次の3つが共通していると言えそうです。
- テクノロジーの活用
- 業務プロセスの効率化
- 人材育成
あなたの会社の人時生産性は、他社と比べてどのレベルにありそうですか？
これからの時代は、一人一人がどれだけ生産的に働いてくれるかがカギになってきます。
将来の生産性向上に向けて、今からさっそく取り組んでいきましょう。
