背景
某企業様では某部署(6名)で、次のような様々な問題を抱えていた。
- 「仕事とプライベート」が混同し、休日でも休まらない
- 失敗・ミスの連鎖など、「気持ちの切り替え」がうまくできない状態
- 集中力が継続しない
- 人にうまく相談できず抱え込んでしまう
そこで、これらの問題を解決すべく、弊社に解決を依頼した。
経済効果
先行研究では、6職場合計47名に職場環境改善の介入を行い、その結果、生産性が年2~3%が向上すると試算された(1)。
前提で説明したように、個人の平均年収を400万円とすると、これは、金額にして年380万円~560万円の利益増に相当する。もしこの研修を通じて、職場環境改善が進めば、同様の生産性向上が期待できるものと思われた。
介入
シスコで行われた研究によると、チームメンバーが自分たちで業務改善のやり方を考えてもらうやり方は、メンバー1人に抽象的なチームワーク研修を受けさせるより、格段に大きな効果が得られることが分かっている。
これをふまえ、現場の社員さんたちが自力で解決策を導き、実行できるような3時間の研修を計画した。この研修で、メンバーは互いに話し合い、次の5つのテーマを完了させた。
- 職場が現在抱えている問題の明確化
- それらの問題の関係性の明確化
- 特に重要度の高い問題の明確化
- 重要度の高い問題の解決策のアイディア出し
- 今すぐ実施できることの決定
結果
この研修によって、メンバーは問題やその解決策の共通理解を得ることができた(下記)。
また問題解決に特に重要と思われる、「スケジュール管理のしくみ」を導入することが決定した。研修後しばらくしてヒアリングしたところ、そのしくみをきちんと導入しているようだった。
しかし、この研修が1回限りで終わってしまったこと、研修直後に、この部署が別の部署と統合されたこと、などの理由で職場環境改善の効果を追跡することができなかった。
考察
今回の介入で、新しい職場改善のしくみを見つけることができた。もし、部署の統合が行われず、このしくみが使われ続けたとすると、先行研究と同様の生産性向上(2~3%向上)は十分に期待できたと思われる。
すなわち、今回の介入の経済効果は、数字にすると、年48~72万円の純利益増に相当すると思われる。またこの部署の生産性が上がることで、他部署との連携もよくなることが考えられることから、それ以上の利益増が発生することも期待できた。
参考資料
- 吉村ら(2013)日本における職場でのメンタルヘルスの第一次予防対策に関する費用便益分析