背景
某企業様(約80名)で、「会社を辞めたい」というBさんを発見した。理由を聞くと「人間関係が辛い」とのこと。人間関係の辛さの理由を聞いていくと、被害妄想の傾向があり、それによって苦しくなっている様子。
本人としては人間関係の辛さが解消されれば、継続して働きたいとのことで、個別カウンセリングを開始した。
経済効果
リクルートの調査(1)によると、1人採用するのに約100万円の採用コストがかかる。これに育成コストを加味すると、離職した人材と同等の人材を補うのに1人300万円相当の追加費用が発生する。
また人間関係が悪くなるほど、離職リスクも高まること(2)(3)が分かっている。つまり、カウンセリングを通じて離職が防げれば、そのまま離職する場合に比べ、300万円の利益増につながると考えられる。
介入
ZOOMでの個別継続カウンセリングを実施。最初の面談で、人間関係が辛い理由が、自分が言いたいことを他者に言えないからであることが分かった。そこで、「自分が言いたいことを言えるようになる」ことを目的として、カウンセリングを進めることに決定。言いたいことを言うための様々なトレーニングを実施している。
結果
カウンセリングがスタートして1ヵ月程度であるため、効果は未定。しかし今のところBさんは勤務を継続している。
考察
今後本人がより意見を言えるようになっていけば、離職を防ぐだけでなく、本人や周囲の生産性も向上していくことが期待できる。もしそうなると、離職防止の経済効果300万円だけでなく、生産性向上の経済効果(約50~100万円)も期待できる。
この企業では、メンタル問題の早期発見を目的として、全社員カウンセリングを導入していたため、離職リスクのある個人を早期に見つけることができた。
このように「企業の現状把握」「問題への介入」を連動させておくことが、問題の効率的な改善につながる。
参考資料
- リクルート(2022)就職白書
- 高原(2018)ストレスチェックによる退職予測モデル
- 中村ら(2016)大学病院に勤務する看護職員のワーク・エンゲイジメントに影響する要因