From:堀口寿人
もしあなたが「頭の回転を速くしたい」と思っているなら、すぐに方法に飛びついてはいけない。
というのも、「なぜその方法をすべきなのか?」を理解できていないと、方法を実践し続けられないからだ。
結果、頭の回転が遅い人は、頭の回転が遅いままになる。そしてまた新しい方法を探し求めることになる。
頭の回転を速くする方法を知りたい気持は痛いほどわかる。でも、そのためには、まず頭の回転のメカニズムを理解することが大切だ。
まず、頭の回転という言葉そのものがあいまいだ。というわけで最初に頭の回転の意味を定義しよう。
1.頭の回転とは?
1-1.頭の回転の定義
「頭の回転」という言葉は、そもそも俗語だ。俗語という事は、正式に辞典に載っていない言葉という事だ。だから、定義もあいまいで、人によって色んな解釈がある。
そんな状態で、頭の回転を速くする方法を話しても、おそらくあなたに意味は伝わらないだろう。おそらく、あなたの解釈と、僕の解釈が違うからだ。
というわけで、僕は頭の回転を「ものごとを正しく処理するスピード」と定義したい。
この定義にそって言うと・・・
- 問題の答えがサッとわかる
- 解決策をいくつも見出せる
- 今その状況でどうふるまうべきかが客観的に分かる
というのが、頭の回転の速い人というわけだ。
だから、一般的に言う、くだらない話をベラベラ話すタイプの人のことじゃないことだけ注意して欲しい。
1-2.頭の回転が速い人は知恵がある
頭の回転については、「なぜあの人は頭の回転が速いのか?」という記事でざっくりと説明した。
この記事で説明したことは、「頭の回転が速い人は知恵が働いていて、遅い人は知恵が働いていない」ということだ。この事をもう少し詳しく掘り下げてみると、こういう表現もできるだろう。
- 頭の回転が速い人は、ものごとの処理スピードが速い=知恵がある
- 頭の回転が遅い人は、ものごとの処理スピードが遅い=知恵がない
つまり、頭の回転とは、「ものごとを正しく処理するスピード」のことだ。
“正しく”というのがポイントだ。いくら処理スピードが速くても、処理内容が間違いだらけだったら、やっぱりその人は頭の回転が速いとは言えない。
では、もう少し掘り下げてみよう。「ものごとの処理」ってどういうことだろう?
2.ものごとの処理とは?
僕たちは生きている。生きているというのはどういうことかを考えたことはあるだろうか?
それは、「何かしらの情報をキャッチして、それに反応する」ということだ。これが生きているということだ。
だから石や家や水などは、生き物じゃない。何の情報もキャッチしないし、それに反応することもないからだ。
このことをもう少し掘り下げると、僕たちには常に次の2つの処理をしていることになる。
- インプットの処理・・・情報をキャッチすること
- アウトプットの処理・・・その情報に反応すること
2-1.インプットの処理
インプットの処理が行われるのは、ご存知、五感だ。僕たちは五感からそれぞれの情報をキャッチする。
でも、実はこれだけじゃない。他にもある。何かと言うと脳だ。実は、僕たちは脳でも情報をキャッチしている。それは、記憶・思考・妄想・感情などの他に、脳内物質や電気信号などといった情報だ。
ちなみに現代の心理学だと感覚器は5つと教えているが、仏教では、感覚器は脳を入れて6つだとしている。さっきの説明からも分かるように、脳も感覚器と考える方が自然だろう。
つまり、まとめるとこういうことだ。
- 視覚器に光
- 聴覚器に音
- 嗅覚器ににおい
- 味覚器に味
- 体性感覚器に温度や堅さ
- 脳に記憶・思考・妄想・感情など
というわけで、インプットの処理の流れを見てみよう。
2-1-1.情報をキャッチ
まず、さっき話した6つの感覚器に情報が触れなければいけない。そうしないと僕たちは何も感じることも考えることもできない。これが「感覚」という段階だ。
例えば、あなたが五感全てに何も感じず、かつ、何も考えることができない状態になったと想像して欲しい。ちょっと想像しにくいかもしれないが・・・。
これは言わば、脳死した植物人間と同じような状態だ。だから、何も感じることも考えることもできないのはイメージしてもらえるだろう。
ちなみに、この時点で、頭の回転が速い人と遅い人の差はあまりない。
2-1-2.情報を整理
次に、6つの感覚器で受け取った情報は脳に運ばれて、パーツごとに分類整理される。これが「知覚」という段階だ。
この時点では、例えば、形とか大きさとか色とか、そういった断片的な情報に分かれていて、統合されていない。
この時点でも、頭の回転が速い人と遅い人の差はあまりない。
2-1-3.情報を概念化
さらに、分類整理された情報を統合して、「それが何なのか?」を決める段階に移る。これが「認知」の段階だ。
この時点で、断片的な情報が統合されて、意味ある一つのまとまりとして概念化される。簡単に言うと、その対象に名前を付ける段階と考えてもいい。
例えば、何かを見たとして、この時点で初めて「これは犬ですね」と意味ある対象として認識できる。
頭の回転が速い人と遅い人の差が生まれるのはこの時点だ。詳しくは後で説明する。
インプットの処理はこれで終わり。次に、その概念に対して、「どう反応するか?」という問題になる。それがアウトプットの処理だ。
2-2.アウトプットの処理
アウトプットの処理が行われる場所は、次の3つある。
- 体・・・体を動かす
- 口・・・言葉を話す
- 心・・・心を働かせる(思考や感情など)
この中で一番大事なのが「心」だ。というのも、心は体や口に先立つからだ。
例えば、「ケーキを見つけて、それを食べる」という簡単な例を考えてみよう。「食べる」ということは、必ずその前に「食べたい」という気持ちが先立っているのが分かるだろう。
言葉を話すときもそう。「おはよう」という前に、「おはようと言おう」という気持ちが必ず先立っている。
だから、心のアウトプット処理がすごく、すごく、すごく重要だ。心のアウトプット処理には次の2つがある。
2-2-1.思考
思考とは、現実的、生産的、意識的、理性的な心のアウトプット処理だ。これらの特徴はバラバラなようで全部関係している。
例えば、あなたは学生時代にテストの問題に真剣に取り組んだ経験はないだろうか?
もし、あなたがテストに真剣になったタイプなら、テスト中に夜ご飯のことを考えたり、好きな人のことを考えたりしなかったはずだ。「今目の前のテストの問題をどう解くか?」だけを考えたはずだ。
このとき、心は、「今」という現実にビタッと張り付いている感じになる。この状態の時に、目の前の対象(この場合はテスト問題)の理解は進み、問題が解決されていくこととなる。
だから、現実的、意識的、理性的というのも全部セットだ。頭の回転が速い人ほど、思考モードになりやすいというわけだ。イメージで言うとこんな感じ。
2-2-2.妄想
妄想とは、非現実的、非生産的、無意識的、感情的な心のアウトプット処理だ。これらの特徴も全部関係している。
例えば、好きな人のことを考えていたら、あっという間に時間が過ぎていた経験はないだろうか?
これが典型的な妄想だ。このとき、まさしく、僕たちの心は、非現実的、無意識的、感情的な状態になっている。イメージで言うとこんな感じだ。
現実を離れて、色々寄り道したあげく、目の前の処理は全然進んでいないのが分かるだろう。現実が見えてないという意味では無意識も同然なわけだ。
2-3.要するに・・・
頭の回転が速いとは、「インプットの処理とアウトプットの処理が正確で速いこと」というわけだ。
言い換えると、頭の回転とは「状況を正しく把握し、その状況に対して適切な反応をするスピード」ということになる。
長くなってしまったが、どうしても必要な知識だから、あえて説明した。というのも、今話したことは、頭の回転を速くする方法にガッチリ関連しているからだ。
頭の回転を速くする方法に行く前に、もう少しだけ理解して欲しいことがある。それが、頭の回転が遅い人と速い人の特徴だ。
3.頭の回転が遅い人の特徴
3-1.頭の回転が遅い人のインプットの処理
インプットの処理で、6つの感覚器で情報をキャッチして、それを分類整理するところまでは、頭の回転が遅い人と速い人で差がないと話した。
問題は、情報を概念化する認知の段階だ。
この段階で、頭の回転が遅い人は次のどちらかのパターンをたどる。
- 全部の情報がそろわなくても、残りは適当に妄想で埋め合わせる
- 時間をかけても、十分な情報を集めきれなかったりする
例えば、実際に見ているものは「犬」であっても、
- 瞬間的に見た情報だけで「これはキツネですね」と判断したり
- よく見ても「何かよく分からない・・」という状況に陥ったりする
こんな感じで、頭の回転が遅い人は、対象を正確に理解できない。
まあ、対象が犬であれば簡単かもしれない。ただ僕たちは普段無数の対象の情報を感覚器で受け取っているわけだ。だから、こういう誤解はよく起こる。
そして、「事実とは違う、間違った概念」が作られるわけだ。
3-2.頭の回転が遅い人のアウトプットの処理
さらに、その概念について、頭の回転が遅い人は妄想的に処理する。
妄想にというのは、さっきも言ったように、非現実的、無意識的、感情的というのとセットだ。
例えば、実際見たのは犬なのに、キツネだと判断し、こう考えたりする。
「わーキツネだ。キツネは幸せの象徴だわ。ということは私は選ばれし者ということだね。そう言えば前世は貴族だったような感じもあるし・・」
概念を妄想的に処理している間は、夢の中にいるのと同じ状態になっている。言い換えると、その間、目の前の処理は何ら進展していないというわけだ。「時間がただ失われただけ」という状態だ。
3-3.要するに、頭の回転が遅い人は・・・
頭の回転が遅い人は、感覚器で情報をキャッチしても、それを事実にそぐわない概念に仕立ててしまう。その概念は、自分本位の間違った知識として頭に保存される。
さらに、その自分本位の知識をもとに因果関係を無視した、非現実的、無意識的、感情的な妄想を巡らせるわけだ。
つまり、ものごとを処理するにあたって、ものすごく無駄が多いわけだ。結果的に、ものごとの処理は進まない。これが「頭の回転が遅い」と言われる理由だ。じゃあ、頭の回転が速い人はどうだろう?
4.頭の回転が速い人
4-1.頭の回転が速い人のインプットの処理
頭の回転が速い人は、多少時間がかかってもものごとを正確に概念化していく。
一見時間がかかる様に見えるが、これが実は一番速い。というのも、情報処理に無駄がないからだ。
例えば、テスト問題を解く場合でも、頭の回転が速い人は、多少時間がかかっても、問題文の内容を正確に読み解く。だから、正しく回答できる。
頭の回転が遅い人は、ちょっと問題文を読んでさっと分かった気になって、問題を解こうとするが解けない。
「おかしいな~」と思って、問題文を読み返すと、問題文の内容を誤解していたりするわけだ。さらに「やべー、どうしよう、やっちゃったよ・・・」とか無駄な妄想をめぐらして、結果、問題を解くのが遅くなる。
4-2.頭の回転が速い人のアウトプット処理
頭の回転が速い人は、ものごとを正確に概念化して理解したら、その概念に合うような適切な反応を起こす。
さっきのテストの例で言うと、「問題の答えを導き出す」ということだ。これは正確に問題文を理解しているからこそできることだ。
4-3.要するに、頭の回転が速い人は・・・
ものごとのインプット処理にもアウトプット処理にも無駄がない。現実に即して目の前の問題を着実に処理していく。
だから、結果的に、ものごとの処理がものすごく速くなる。
5.ここまでの頭の回転まとめ
つまり、本来、僕たちの頭の回転は速いはずなのだ。
それが、なぜ遅くなるのかと言うと・・・
ものごとのインプット処理やアウトプット処理で、たくさん無駄なことをしてしまうからだ。
さらに、頭の回転が遅い人は、無智で、自分が犯している無駄を、無駄と気づかず繰り返してしまう。
ここに、「頭の回転が遅い人完成!」というわけだ。
これで、頭の回転を速めるには何をすればいいか、見えてきたんじゃないだろうか?
6.頭の回転を速くする方法
ということで、今回の本題。頭の回転を速くする方法だ。これまでの、内容を踏まえて、次の3つが考えられる。
- インプットの処理を正確にする
- アウトプットの処理を正確にする
- 基礎的な脳力を底上げする
6-1.インプットの処理を正確にする
これは、一言で言うと、「ものごとを時間をかけてよく吟味する」ということだ。具体的には次のようなことを実践して欲しい。
- もし感情が出たら、感情が収まるまで待つ。その時間は全く無駄ではない。
- 一度判断しても、本当にその判断で合っているのかを自分に問う。
頭の回転が遅い人は、常に何かに追われて焦る傾向がある。焦りというのはそもそも感情的なもので、非現実性や無意識と関係が深いものだ。
というのも、意識的に「今から焦ろう」と思って、焦る人はいない。「焦ってしまう」のだ。だから無意識的だと言える。
それでも「焦った方がものごとを早く処理できる」と思うなら、実際に焦っている人をよく観察してみるといい。いかに非生産的で、無駄が多いかよく分かるはずだ。
とくに、ものごとの判断ミスがとても多い。
その結果、ありもしない概念に妄想や感情で振り回されることになる。そして時間を浪費するわけだ。全く生産性がない時間を。そして「自分はダメだ」とまた妄想する。そうやって悪循環を強化してしまうわけだ。
これは車に例えると、質のいいガソリンを入れるというようなイメージだ。
6-2.アウトプットの処理を正確にする
これは、「妄想をかきたてる環境を改善する」ということだ。
例えば、アダルトショップにいて、「セックスのことを考えるな」と言われても、それは難しい。
というのも、僕たちの思考も妄想も、必ず感覚器からの情報から始まるからだ。言いかえると、僕たちの思考も妄想も、環境の影響を受けるという事だ。
だから、頭の回転を速めたい環境では、妄想につながるようなものを取り除く必要がある。
これは車に例えると、走りやすいように道路を舗装するというイメージだ。
6-3.基礎的な脳力を底上げする
今、挙げた2つは、今すぐできることだ。さらに、もっと大事なのが、3つめの「基礎的な脳力を底上げする」だ。
そもそも、デフォルトの初期状態で、インプット処理とアウトプット処理を正確に適切にできるような自分になることだ。
これは、時間がかかるが、いったん力が身に付けば、あなたは素の状態で頭の回転が速い人になる。
具体的にやるべきことは、ずばり「マインドフルネス瞑想」だ。マインドフルネス瞑想はあなたの思考力や理性を確実に強化してくれる。もちろんその科学的根拠もある。
これは車に例えると、エンジンの大きさを大きくするというイメージだ。
マインドフルネス瞑想のやり方は「今日からできる!マインドフルネス瞑想の効果的な正しいやり方」を参考にして欲しい。
マインドフルネス瞑想の効果に関しては、「こんなにある!マインドフルネス瞑想の驚きの効果」が参考になるだろう。
7.まとめ
この記事では、頭の回転を「ものごとを正しく処理するスピード」と定義した。
そう考えた場合、ものごとの処理には、インプットの処理とアウトプットの処理の2つが考えられる。
頭の回転が速い人は、インプットの処理とアウトプットの処理の両方で無駄がなく、時間あたり、ものごとをたくさんの処理ができる。
頭の回転が遅い人は、インプットの処理とアウトプットの処理の両方で無駄が多く、時間あたり、ものごとをほとんど処理ができない。
だから、頭の回転を速くするには・・・
- インプットの処理を正確にする
- アウトプットの処理を正確にする
- 基礎的な脳力を底上げする
の3つをやればいい。そうすれば、頭の回転スピードは確実に上がる。
すごく分かりやすい文章で興味が湧きました。