From:堀口寿人 金沢のオフィスより
あなたがストレスの意味を知りたいと思っているとしたら、きっとあなたは賢い人だ。
というのも、ストレスという言葉はあまりにあいまいに使われすぎているからだ。おそらく、あなたはそのことに気づいているのだろう。
世の中では、ストレス社会だと言われていて、「ストレス」「ストレス」という言葉か飛び交っている。
でも、「ストレスって何ですか?」と聞くと、たぶんみんな答えられないはずだ。「幸せ」という言葉と同じように、「ストレス」という言葉を何となく使っているからだ。
そんなわけで、ここではストレスという言葉の意味を掘り下げていきたい。
1.ストレスと聞いて何を思い浮かべるか?
まず、ストレスというとあなたは何を思い浮かべるだろう?
- 上司とか部下との人間関係
- 仕事が苦痛
- 家族とのすれ違い
- 体調不良
とか、たぶんこんな感じの出来事を思い浮かべたんじゃないだろうか?
ここで、最初にお伝えしておくことがある。「ストレスとは何か?」ということについて、実は心理学でもハッキリした定義がない。「そんなバカ」なと思うかもしれないが本当だ。何でストレスについてはっきりした定義がないかは後ほど・・・。
というわけで、現時点では、「ストレス=辛い!苦しい!という感じ」と定義してお話を進める。私が「ストレス」という言葉を使ったら、そういう意味だと思って欲しい。
それで、まず、私たちは、さっき挙げたような状況の時にストレス、つまり、「辛い!」「苦しい!」と感じる。でも、面白いことに、同じ状況でも、その苦しさの度合いは人によって違う。
例えば、仕事で失敗して100万円の損失を出してしまったとイメージして欲しい。そんな状況でも「別にいいや」と思う人もいれば、「死のう・・・」と思う人もいる。
ということは、その出来事そのものがストレスの度合いを決めているわけじゃなさそうだということだ。じゃあ、何がストレスの度合いを決めているのか?
それは、その出来事に直面したときに生れるネガティブ感情だ。言い換えると、私たちは、ネガティブ感情によって、「辛い!苦しい!」と感じるわけだ。
ネガティブ感情というのは、例えば、怒り、不安、緊張、焦り、憂鬱、興奮・・・・みたいな、聞いてるだけで気持ちが重くなるような感情のことだ。
でも、さっきお話ししたように、同じ出来事に直面しても、人によってネガティブ感情の出方に違いがある。じゃあ、何でそんな違いが生まれるのか?
2.ストレスの仕組み
その答えは、ストレスの仕組みにある。この図を見て欲しい。
まず、僕たちがストレスを感じるには、最初に何かしらの刺激が必要だ。何も刺激がなく「ストレスだ~」と言っている人がいたら、ちょっとヤバい人だ。
それで、刺激と言うと、一般的に、人間関係やら仕事の内容やらそういうものがイメージされることが多い。確かにそれらも刺激に違いはないが、刺激はそれだけじゃない。そういう外の刺激以外にも内の刺激というものがある。
内の刺激というのが、記憶、感情、思考などと呼ばれるものだ。こういうものの方が実は注意が必要だ。というのも、自分に四六時中ついて回る刺激だからだ。
それで、外の刺激であれ内の刺激であれ、そういう刺激に対して、「この刺激は悪者だ」という認識をすると、ネガティブ感情が生まれる。逆に言うと、「この刺激は悪者だ」という認識をしなければネガティブ感情は生まれない。
さらに、そのネガティブ感情によって汗が出たり、鼓動が早くなったりという体の変化が生まれる。
厳密には、もっと複雑なしくみになっているが、ざっくり言うと、こんな感じだ。
それで、この刺激の部分を「ストレッサー」、それに対する反応を「ストレス反応」という風に分けることもある。
3.ストレスとは?
ここで改めて「ストレスとは何か?」というお話に戻ろう。
一般的にストレスと言うと、「何か特定の対象」を思い浮かべるだろう?でも、その前提自体が間違っている。
実は、ストレスとは、「辛い・苦しい」という感覚が生まれる流れ全体のことを言うのだ。別の言い方をすると、ストレッサーとストレス反応を合わせたものがストレスだ。
だから、ストレスとは「特定のもの」ではなく、「一連の流れ・現象」と考えた方が正確だ。
なので人によってストレスの意味するものが違うわけだ。例えば・・・
- 「この仕事ストレスだわ~」と表現した場合、ストレスの刺激という次元でストレスと言う言葉を使っている。
- 「人間関係で強いストレスを感じている」と表現した場合、ネガティブ感情という次元でストレスと言う言葉を使っている。
- 「仕事が辛くて体にストレスが出ちゃってるんだよね」と表現した場合、体の反応という次元でストレスと言う言葉を使っている。
こんな感じで、人は色んな次元でストレスという言葉を使うので、訳が分からなくなるわけだ。
4.あえてストレスを定義するなら
ストレスの定義は難しい。というのも、どんな生命体にもストレスは存在するだろうし、生命体によってストレスの発生の仕方が違いそうだからだ。
ただ、今は人間に対してお話ししているので、対象を人間に限定するなら、ストレスは次のように定義できるかもしれない。
人が、ある刺激によって辛い苦しいと感じるプロセス
あくまで私の視点から見た定義だ。他にもっとシンプルで理にかなった定義があれば、また教えて欲しい。