From:堀口寿人
あなたがこの記事にたどり着いたということは、きっと、自社の社員のメンタルを改善して、強い組織を作ろうと思っていることだろう。
あなたは間違っていない。確かに、レジリエンスはそのための必須要素だ。
今の段階で、あなたには「レジリエンス=ストレスに対する強さ」くらいの認識はあるかもしれない。
その意味でだいたい間違いないが、実はレジリエンスにはまだまだ深い意味がある。今回は、そんなほとんど誰も知らないレジリエンスという概念を、独特かつ理論的な視点から明らかにする。
その上で、
- レジリエンスが高い人はどんな特徴を持っているのか
- どうやって社員のレジリエンスを高めればいいのか
についても、触れていく。なので10分だけ付き合って欲しい。
10分後には、あなたは雲が晴れたようにレジリエンスの意味や高め方について理解しているはずだ。
そんなわけで、まずはレジリエンスの意味を確認しよう。
1.レジリエンスの意味とは
1-1.レジリエンスの言葉的な意味
レジリエンスとは、大まかに言うと、ストレスを受けた際の精神的回復力という意味だ。
例えば、太さ5cmくらいの木が生えているのをイメージして欲しい。その棒を横からググっと押すとどうなるだろう?おそらくある程度押したところで、ポキッと折れる。
じゃあ今度は、同じ太さの竹だったらどうだろう?おそらくさっきと同じ力で押したとしても折れない。竹はしなるだけだ。そして、押すのをやめると、ヒュッと元の状態に戻る。
これがレジリエンスのイメージだ。要するに、レジリエンスが高い人はダメージを受けても、元の状態に戻るのが早い。
ここまでの理解は、ほとんどの研究者で一致している。問題はここからだ。今話してきたのが精神的回復力だが、実体はよく分からない。
現時点で分かっているのは、漠然としたイメージだけ。実際にレジリエンスがどんな概念かは全くのブラックボックスだ。
レジリエンスを具体的に概念化できなければ、本当にレジリエンスを理解したことにはならない。
1-2.レジリエンスとはどんな概念か?
これまでも、色んな研究者が、レジリエンスを概念化しようと頑張ってきた。
- ある研究者は、「レジリエンスは、自己志向性・楽観性・関係志向性から成る概念だ」と言っている。
- ある研究者は、「レジリエンスは、新奇性追求・感情調整・肯定的な未来志向から成る概念だ」と言っている。
- ある研究者は、「レジリエンスは、楽観的協働性・共通性・対等性・安定性から成る概念だ」と言っている。
・・・・
というように、一口にレジリエンス=精神的回復力と言っても、いざ概念化しようとすると、研究者によって言うことがバラバラ・・・というのが、今のレジリエンス研究の現状だ。
つまり、研究者たちでさえ、レジリエンスがどんなものか、今必死で解き明かそうとしている所なのだ。
「じゃあ、レジリエンスを概念化できないのか?」と思うかもしれないが、ちょっと待って欲しい。
実は、別の視点から見ると、レジリエンスをとてもスッキリ理論的に説明できるのだ。その視点とは、心のモデルだ。
2.心のモデル
心の仕組みは、とても複雑だが、実は簡単な因果関係モデルとしてあらわすことができる。この心のモデルを理解しておけば、レジリエンスを驚くほどスッキリと的確に理解できる。
というわけで、この図を見て欲しい。この図は、人の心の流れがどうなっているのかを表したものだ。
このように、刺激→思考→感情の順に因果関係が成り立っている。これは全ての人間に共通するモデルなので、どんな人も例外なく、この流れで心が機能する。
2-1.刺激
まず、私たちの心が機能するには、何らかの刺激が必要だ。刺激が全くないのに心が機能することは絶対にない。じゃあ刺激とは何なのか?
大きく分けて、刺激には外の刺激と内の刺激の2種類がある。
2-1-1.外の刺激
外の刺激というのは、光、音、体の刺激、味、臭いなどだ。要するに五感でキャッチするタイプの刺激だ。
おそらくあなたが思いつく刺激をリストアップしたら、ほとんどこの5つのどれかに分類されるはずだ。
でも実は、刺激はこれだけじゃない。むしろ、これらよりもっと重要な刺激がある。それが内の刺激だ。
2-1-2.内の刺激
内の刺激というのは、記憶、思考、感情といったものだ。実は、この内の刺激の方が、外の刺激よりずっとずっと重要だ。
というのは、内の刺激は自分の意思一つでいくらでも作り出せてしまうからだ。時間と場所に関係なく。
じゃあ、内の刺激がもし自己嫌悪的な考え、怒りの感情、過去の失敗の記憶などのネガティブなものだったとしたら?
際限なく自分はストレスを感じ続けなければいけないことになる。
要するに、「何の刺激もキャッチしてない」と自分では思っていても、私たちは常に記憶、思考、感情といった内の刺激をキャッチしているわけだ。
2-2.思考
そうやって刺激を受けて、次に私たちは何かしら思考するわけだ。思考の段階は大まかに2つに分かれる。
2-2-1.ネガティブ思考
例えば、「“お前は本当にダメな奴だ”と言われた記憶」が刺激だったとしよう。そういった記憶を受けて、「やっぱり自分はダメなんだ」と考えたりする。
このように刺激に対して、ネガティブに考えてしまうのがネガティブ思考だ。でも同じ刺激にも別の考え方もできる。
2-2-2.ポジティブ思考
「“お前は本当にダメな奴だ”と言われた記憶」に対して、「いや、あの人は全然私のことを知らない。本当は私には優れたところがたくさんある」というように考えることもできる。
このように、刺激に対して、ポジティブに考えるのがポジティブ思考だ。
つまり、何か刺激をキャッチすると、私たちはたいてい、それに対してあれこれ考えてしまう。そうすると、その思考にふさわしい感情が生まれる。
2-3.感情
ネガティブ思考をしたか、ポジティブ思考をしたかで、感情の種類も決まってくる。感情の種類も2種類ある。
2-3-1.ネガティブ感情
ネガティブ思考を受けて出てくる感情がネガティブ感情だ。
例えば、さっきの例で言うと、「やっぱり自分はダメなんだ」と考えると劣等感のようなネガティブ感情が生まれるわけだ。
2-3-2.ポジティブ感情
でも、「いや、あの人は全然私のことを知らない。本当は私には優れたところがたくさんある」と考えた場合、おそらく、安心とか、有能感とかそういった類の感情が出るはずだ。
これがポジティブ感情だ。
本当は、何がネガティブ感情で何がポジティブ感情かという議論も必要だ。ただ、突き詰めると一つ記事を書かなくてはいけなくなるので、ここでは大まかに理解しておいてもらえれば十分だ。
2-4.ストレスとは?
さて、今説明してきた心のモデルをふまえて大事なポイントを話す。それは、「ストレスとは何か?」ということだ。
もしかして、「職場の人間関係だ」「パートナーとの関係だ」「仕事の内容だ」のように、外の刺激をイメージするかもしれない。
でも、実は違う。ストレスの実体はネガティブ感情だ。これはとても重要なポイントだ。
私たちは、ネガティブ感情を感じたときに、「辛い・苦しい」という感覚を味わう。その感覚に対して「ストレスだ」と感じるわけだ。
嘘だと思うなら、次のような感情を感じているところをイメージして欲しい。
怒り、妬み、恨み、憎しみ、嫉妬、劣等感、罪悪感、無価値感、無能感、・・・
どうだろう?納得できただろうか?
整理すると、【ネガティブ感情=「辛い・苦しい」という感覚=ストレス】という構図が成り立つ。
この構図は、レジリエンスをひも解く上で、非常に重要なので、絶対に覚えておいて欲しい。
ちなみに、もし感情の段階でポジティブ感情が出たとしたらストレスにはならない。これは経験的に理解できるだろう。
さあ、これで私たちがどのようにストレスを感じるのか、その基本的な流れが分かったはずだ。
繰り返しになるが、人なら誰しも例外なく、この流れでストレスを感じる。
そう言うと、「ストレス刺激を受けたら、思考をはさまずに、直接的にネガティブ感情を感じることもあるんじゃないか?」と言う人がいる。
残念ながらそれは違う。もしその意見が真実なら、
- なぜ身内が死んでも嘆き悲しむ人と、ケロッとしている人がいるのか
- なぜ同じ事故に会ってもトラウマになる人と、明るく過ごせる人がいるのか
- なぜ人から同じ批判をされても、一日引きずる人と、そうでない人がいるのか
説明がつかない。この例からも分かるように、同じストレス刺激を受けたからと言って、誰もが同じようにストレスを感じるわけじゃない。それはつまり、刺激と感情の間には必ず思考が介在しているということだ。
これで、下ごしらえは終わった。この心のモデルをふまえてレジリエンスの正体を明らかにしていこう。
3.レジリエンスの正体
まずおさらいだ。レジリエンスとは、「ストレスを受けた際の精神的な回復力」という意味だった。
つまり、「レジリエンス=ストレス(ネガティブ感情)を制御する力」という捉え方もできる。じゃあ、ストレスを制御するにはどうしたらいいだろうか?
3-1.ストレスを制御するには?
さっきの心のモデルを見て欲しい。
この図を見て、ストレス(ネガティブ感情)を制御するにはどうしたらいいだろうか?
まず2つ答えが思いつくだろう。
- ストレス刺激を取り除く
- 思考を変える(ポジティブ感情が生まれる考え方をする)
さらに実はもう1つある。それが、これだ。
- ストレス刺激に気づく
これはどういうことか、改めて図を見て欲しい。
このように、実は、ストレス刺激の処理の仕方には、
- ストレス刺激について考えるやり方(思考のルート)
- ストレス刺激にただ気づくやり方(気づきのルート)
の2つがある。
面白いのは、気づきのルートでストレス刺激を処理すると、必ずポジティブ感情が生まれる仕組みなっている。つまりストレスが生まれないのだ。
この気づきのルートのことをマインドフルネスと言う。これについては、後で説明する。
でも、残念なことに、私たちはストレス刺激に対して、あれこれ考えることに慣れすぎていて、気づきのルートはほとんど使われることがない。
ただ実際にはこの2つの刺激処理のルートがあることは覚えておいて欲しい。さて、これでレジリエンスを理解する全ての下準備が終わった。いよいよレジリエンスの正体を明らかにしよう。
3-2.レジリエンスの正体を明らかにする
おさらいだが、ストレス(ネガティブ感情)を制御する方法は3つあった。
- ストレス刺激を除去する
- 考え方を変える(ポジティブ感情が生まれる考え方をする)
- ストレス刺激に気づく
レジリエンスとは「ストレスを受けた際の精神的な回復力」なので、ストレス刺激を“受ける”ことが前提となっている。そこで1番を取り除くと2つが残る。
そう、この2つこそがレジリエンスの正体だ。つまり・・
- ストレス刺激に対するポジティブ感情が生まれるような考え方
- ストレス刺激への気づき
という2つの心の機能こそがレジリエンスなのだ。ご覧のように、この2つは内外のあらゆるストレス刺激からあなたを守ってくれる防御フィルタのようなものだ。
そして、この2つの機能は、筋トレをするが如くいくらでも強化していけることが分かっている。
これでレジリエンスがどんなものかハッキリ理解できたはずだ。
それでは、この理解をふまえて、レジリエンスが高い人とはどんな特徴を持っている人なのか、平均的な人よりどう優れているのかを見ていこう。
4.レジリエンスが高い人の10の特徴
さて、もしあなたの会社の社員さんのレジリエンスが高まったら、どんな人材に変貌するだろうか?
それをイメージしながら、この先を読み進めて欲しい。
4-1.ストレスが少ない
まず、当然と言えば当然だが、レジリエンスが高い人はストレス(ネガティブ感情)が少ない。これは、これまでのモデルを振り返ってもらえれば分かるだろう。
4-2.幸福度が高い
さらに、幸福度が高い。幸福度というのも、あいまいな概念だが、要するにポジティブ感情と同じものだと思ってもらえればいい。
感情は、ネガティブ感情かポジティブ感情しかないのだから、ストレス(ネガティブ感情)が減れば、幸福度(ポジティブ感情)が増えるのは当然だ。
4-3.自尊心が高い
自尊心というのは、自分のことをどれくらい価値ある存在と思っているかのことだ。自分を価値ある存在と思っている人のことを“自尊心が高い人”と言う。
さっきの心のモデルを振り返ろう。
自尊心が高い人というのは、「自分」という刺激に対して、「価値がある」という思考をしている状態と言える。この流れを繰り返すことで、自尊心が高まっていく。
4-4.楽観性が高い
楽観性というのは、将来に対するポジティブな捉え方のことだ。心のモデルで表すとこうなる。
4-5.自制心が強い
自制心というのは、自分の感情や衝動をコントロールする力のことだ。自制心が弱い人は、感情任せに怒鳴ったり、欲望に任せてバカな行動をとる。
自制心が高い状態をモデルで表すとこんな感じだ。刺激とのころに、内の刺激として“ネガティブ感情”が来ていることに注意して欲しい。
レジリエンスの高い人は、思考の力でネガティブ感情を制御することができる。
4-6.人付き合いがよい
これまで見てきたように、レジリエンスが高い人というのは、ポジティブ感情を作り出すのがうまい人という見方もできる。
当然、そういう人は、まわりとうまくやっていく能力も高い。
4-7.行動力がある
ここでの行動力とは、目標に向けて計画し、継続的に努力を重ねる力のことだ。これは、楽観性や自制心にも関係するが、目標への希望や日々の感情調整が欠かせない。
結果的に、レジリエンスが高い人は、着実に必要な行動を重ねて、人生の目標を達成していけるわけだ。
4-8.問題解決力が高い
レジリエンスが高い人は、問題解決力が高いことも分かっている。これも心のモデルをイメージしてもらうと分かりやすい。
レジリエンスが高い人は、物事をポジティブに考えるのがうまい人だ。これは言い換えると、考え方が柔軟で、臨機応変さがあるということだ。
映画の脱獄シーンをイメージしてもらうと分かりやすい。
落ちている何の変哲もないひもを拾ったり、スプーンの柄でコンクリートを少しずつ削ったり、みそ汁で鉄格子を少しずつ錆びさせたり・・・
というシーンを一度は見たことがあると思う。例えは悪いが、これがレジリエンスが高い人だ。どんな状況でも、ありあわせのもので問題解決をはかるわけだ。
4-9.自己理解力が高い
これは、自分の価値観、強み、弱み、性格、行動習慣、思考パターンなどをよく理解しているということだ。
さっきもお話したように、レジリエンスが高い人は、考え方が柔軟だ。言い換えると、一つの物事に対して、あらゆる方面から考えることができる。さらに言い換えると、分析能力が高いことを示している。
さっき自尊心のところで、レジリエンスが高い人は「自分」に対してポジティブな意味付けをすると話した。
それ以外にも、レジリエンスが高い人は「自分」に対して、あらゆる面から分析して意味づけすることができる。
4-10.他者理解力が高い
これは、相手の考えや感情を理解し、それに的確に対応する能力のことだ。
自己理解力と同じように、レジリエンスが高い人は、「他者」という刺激に対しても、あらゆる側面から考えることができる。
その結果、他者の気持ちを深く理解して、他者とよりよく協調できるようになるわけだ。
以上がレジリエンスが高い人の10の特徴だ。ちなみに、これらは私が勝手に意見を言ったものではなく、全て過去の研究でも裏打ちされている。
さあ、改めてイメージして欲しい。あなたの会社の社員一人一人が、この10の特徴を身に着けていったとしたら?
おそらく、会社の利益は2倍、3倍になって、優良企業として全国から注目されるようになるだろう。
そのような状態に少しでも近づいていただくために、社員のレジリエンスの高め方を最後にお伝えする。
5.社員のレジリエンスの高め方
ここで今一度レジリエンスとは何かを振り返ろう。レジリエンスとは次の2つの心の機能だった。
- ストレス刺激に対するポジティブ感情が生まれるような考え方(思考のルート)
- ストレス刺激への気づき(気づきのルート)
これをふまえて、レジリエンスの高め方を見ていこう。あくまで、あなたがレジリエンス研修を受ける一社員の立場だとして読み進めて欲しい。
5-1.思考のルートを鍛える
5-1-1.セルフコンパッション
これは、自分へ思いやりを向ける訓練だ。思いやりというのは、存在を肯定するようなエネルギーのことだ。
具体的には、次のような言葉を自分に向けることが基本となる。
- 私が幸せでありますように
- 私の悩み苦しみが無くなりますように
- 私の願い事が叶えられますように
- 私にあらゆる問題を解決できる知恵が備わりますように
こういう言葉をじっくり、じっくり自分の心にしみ込ませるように、自分に語り掛けるわけだ。そうすると、非常に強いポジティブ感情(幸福感)が生まれる。これを心のモデルで表すとこんな感じになる。
またこの実践によって、レジリエンスが高まる以外にも様々な効果が得られることが分かっている。
詳しくは、「セルフコンパッションの全て!意味、効果、やり方まで徹底解説」で解説しているので、ぜひ参考にしてほしい。
5-1-2.ストレスマインドセット
これは、ストレス刺激に対する考え方を変える訓練だ。やり方としては、次の通り。
- ネガティブに考えてしまう刺激(状況)を書き出す。
- 普段の考え方を書き出す
- 新しいポジティブかつ現実的な考え方を書き出す
下に例を挙げるので、参考にしてほしい。
刺激(状況) | 普段の考え方 | 新しい考え方 |
職場の人にダメだしされた | ああ、やっぱり自分はダメなんだ・・・ | 欠点が一つ見つかった。これでまた成長できるぞ! |
ポイントとしては、“現実的な考え方”というところだ。いくらポジティブであっても非現実的な内容だったら非常に危険だ。
例えば、「これは神の思し召しによるものだ」のように考えてしまうと、現実と乖離してしまう。私たちは現実社会に生きているわけだから、考えも現実に根付いていないといけない。
5-1-3.逆境に打ち勝ったストーリー
これもストレスマインドセットの一環だが、自分がストレス刺激(状況)を乗り切った経験を思い出すことを訓練する。そうすることで、似たようなストレス状況に直面したときに生れる思考をポジティブなものに塗り替えるわけだ。
具体的なやり方としては、「自分がストレス刺激(状況)を乗り切った経験をなるべく詳しく紙に書き出す」ということをやる。
5-1-4.自分の強みの認識
自分の強みを知る方法はいくつかある。1つ目は自分のことを知っている人に、「私の強みは何ですか?」と聞く方法だ。
2つ目は、「自分が他の人よりうまくできることを探す」という方法もある。ただ、この場合の問題点は、自分がうまくできることは、自分にとって当たり前になってしまうということだ。
そうなると、自分の強みだと思えなくなってしまうのだ。実際に、普段当たり前にやっていることほど自分の強みである可能性が高い。このことを必ず念頭に置いておこう。
3つ目は、強みテストを受けるというやり方だ。強みテストは、ペンシルベニア大学が運営する「authentic happiness」というサイトがあって、そこで受けることができる。
強みテストを受けることで、24の領域において、自分がどんな強みを持っているのかを分析できる。
強みテストを受けるには、専用のアカウントを作る必要があるが、日本語にも対応しているので、ぜひ受けてみて欲しい。
5-1-5.価値観の認識
価値観とは自分が大事にしていることだ。自分が大事にしていることをベースに生きていると、自分の人生がとても価値あるものと感じられるようになる。具体的には次のように実践しよう。
- あなたにとって重要な価値観を3つ書き出そう。
- それらが重要だと思いますか?
- またそれらを日常でどのように実践していますか?
下に例を挙げる。
重要な価値観 | なぜ重要か? | どう実践している? |
自制心 | 自制心がないと自分が望む人生を実現できないから。社会とうまく折り合えないから。 | 自分のやりたいこと、言いたいことがあってもいきなり出さずに、まず一度自分の中でチェックしている |
努力 | 努力しないと目標を達成できないから。 | 毎日やるべきタスクを決めて、確実にこなすようにしている |
大局観 | 目先のことにとらわれると、結果的に損することが多いから | 目の前の事柄を離れ、自然の中で冷静に考える |
5-1-6.コモン・ヒューマニティ
ストレス刺激(状況)に直面すると、私たちはつい「こんなに辛いのは自分だけだ」と考えがちになる。これは、ストレスによって視野が狭くなって起きる考え方だ。
でも冷静になってみると、誰もが、人それぞれのストレス刺激(状況)に直面しながら頑張って生きていることがよく分かる。
このようにコモンヒューマニティとは、「ストレスに打ちひしがれているのは自分だけじゃない!人は誰しも多かれ少なかれ、ストレス刺激(状況)に直面しながら頑張っている」ということを認識する訓練だ。
具体的なやり方としては、この順番で実施しよう。
- ストレス刺激(状況)を書き出す
- 「こういう苦しみを味わっているのは本当に自分だけだろうか?誰もが経験することではないだろうか?」と自分に問いかける。
- 同じように苦しみを味わっている人を書き出す
下に例を挙げる。
ストレス刺激(状況) | 自分だけ? | 同じような人 |
上司に「こんなこともできないのか」と罵倒された | 違う | 同僚の佐々木さん学生時代の友人の山田兄のたかし |
さあ、ここまで、思考のルートについてみてきた。次は、気づきのルートついて見ていこう。
5-2.気づきのルートを鍛える
気づきのルートの鍛え方は一つしかない。思考のルートと違って、気づきのルートでは、刺激に対して、ただ単純に気づくというやり方しか存在しない。
それがマインドフルネスだ。マインドフルネスとは、現実に起きている事象にあるがまま気づくことを言う。まず、この図を見て欲しい。
例えば、刺激として「人の声」が聞こえたとしよう。思考ルートの処理なら「私にエールを送ってくれている」のように、聞こえたものに対して何かしら意味づけする。
でも、気づきルートの処理では、「人の声」という刺激に意味づけせず、刺激をあるがまま観察する。
じゃあ事実とは何か?それは、「音が耳に触れた」ということだ。それ以上でもそれ以下でもない。
実際は、オーディオから聞こえた音かも知れず、聞こえたものが「人の声」であるという確証すらないのだ。これが刺激にあるがまま気づくということだ。
だから、刺激が、
- 何か見えたのであれば「見える」と気づき
- 何か聞こえたのであれば「聞こえる」と気づき
- 自分の中に怒りが生まれたのであれば「怒り」と気づく
ただそれだけだ。
じゃあ、どうすれば気づいたことになるのかだが、それはラベリングだ。要するに、何かしら刺激をキャッチしたら、その刺激に心の中でラベルを貼る(言う)わけだ。
- 感覚を感じて、ラベルを貼る(言う)
- 感覚を感じて、ラベルを貼る(言う)
- 感覚を感じて、ラベルを貼る(言う)
というように、感じた感覚に対してひたすらラベルを貼る。まるでモグラたたきの頭をポコポコ叩くように。
さっきもお伝えしたが、思考のルートではネガティブ感情が出る可能性が高い。でも、気づきのルートでは必ずポジティブ感情が出る。
詳しいやり方は、「今日からできる!マインドフルネス瞑想の効果的な正しいやり方」を参考にしてほしい。
6.まとめ
レジリエンスとは、ストレスを受けた際の精神的回復力という意味だ。その正体は、次の2つの心の機能から成り立っている。
- ストレス刺激に対するポジティブ感情が生まれるような考え方(思考のルート)
- ストレス刺激への気づき(気づきのルート)
レジリエンスが高い人は、考え方が柔軟で、一つの物事に対してあらゆる側面から考えることができる。
その結果、自分やまわりの環境に対しても、ポジティブな意味づけができたり、より深く詳しく物事を分析できたりする。
レジリエンスを高めるには、思考のルートと気づきのルートの両方を鍛える必要がある。
そうすれば、社員一人一人の幸福感、自尊心、パフォーマンス、他者への思いやりが高まり、結果として組織全体のレジリエンスが高まる。
素晴らしい内容だと思いました。私は社員研修の講師を行っている者ですが、上司がこのような考えを知っていれば、会社の中のストレスが消えていくと思いました。