集中力とは?集中力の意味を例え話で解説

From:堀口寿人
集中力の意味を改めて考えてみて

集中力の意味をウィキペディアで調べると・・・

「一つの事柄に注意を集中して物事に取り組む能力」と出てくる。

仏教的に、集中力とは・・・

「心に入ってきた情報から離れることなく、くっついている」という意味がある。

いずれにしても、「集中力とは、ある特定の対象に対して心がガチッと固定されている状態」だと考えればいいだろう。

実際に、この状態をイメージしやすくするために、ライン作業の例えを考えてみた。

集中力:ライン作業の例え

あなたは、大型機械を作るメーカーの社長だとしよう。あなたの会社には10人のスタッフが働いている。あなたは、その10人のスタッフを使って効率よく仕事をしたいと考えている。

あなたの会社で作る大型機械は、どれもライン作業でしか作れない。しかもあなたの会社にはラインが一本しかない。その一本のラインに10人のスタッフが配置され、彼らは毎日自分の仕事をしている。

さて、あなたの会社は好調で、注文がひっきりなしに入ってきている。今受注している機械は10台(機械A~機械J)で、全部違う種類の機械だ。

あなたの会社の環境はこんな感じ。その環境で、スタッフが次のように動いたらどうなるだろうか?

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みんな別々の機械を組み立てる

一つ目は、スタッフ一人一人が別々の機械を組み立てるという動きだ。ラインは1本しかない。そんな中、みんな別々の機械を組み立てるために働くわけだ。

1人目の人は機械Aを組み立て、2人目の人は機械Bを組み立て、・・・・というように。

この場合どうなるだろうか?

まず、ラインは一本なので、隣同士、連携が全く取れない状況になる。つまり、チームとしての活動と言うより、個人プレーが10個ある状態になるわけだ。

そうなると、機械Aも、機械Bも、機械Cも、機械Dも、機械Eも、機械Fも、機械Gも、機械Hも、機械Iも、機械Jも、全部中途半端になる。どれも完成することはない。

どれも完成しないという事は、会社として、何一つ納品できないという事だ。納品できないということは集金もできない。だから、会社経営はグラグラになる。

みんなで一台の機械を組み立てる

もう一つは、10人のスタッフ全員で機械Aを組み立てる場合だ。会社として他に9台の機械を受注しているかも知れないが、とりあえず1つに集中するわけだ。

そうすると、どうなるか?

まず連携がとれるようになる。一人一人は自分に与えられた仕事をこなせばよく、ミスはぐっと減るし、作業効率もはるかに上がる。

その結果、機械Aは着実に完成に近づくことになる。機械Aが完成すれば、機械Bも同じようにすればいいわけだ。全く問題はない。

一台一台納品もできるので確実に集金もできる。お客さんも喜んでくれるだろう。あなたも社長として計画が立てやすいはずだ。その結果、会社の経営は安定する。

これは、つまり・・・

  • 会社とは、人間のことだ
  • 機械とは、五感でキャッチする情報のことだ
  • スタッフとは、心の働きのことだ

つまり、「みんな別々の機械を組み立てる」というのは、色んな情報に心の働きを分散させている状態だ。これは「集中力がない人の心の状態」を表している。

一方で、「みんなで一台の機械を組み立てる」というのは、ある特定の情報だけに心の働きを集中させている状態だ。これは「集中力がある人の心の状態」を表している。

慌てて、あれこれ同時にやろうとする人が、なぜうまくいかないのか?これで理解していただけるだろう。

集中力の仕組み

ここまで、ライン作業の例えで集中力を説明してきた。なぜ、ライン作業の例えにしたかというと、実際の心も一本のライン作業のように、直列的な働き方をしているからだ。

心は直列

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心はいくつもの流れが並行してあるわけじゃなくて、一つの流れからできている。これは大事な事実だ。

言い換えると、心は“同時に”働くことはできない。つまり、“ながら”はできないということだ。

例えば、食事しながらスマホを見るとか、話しを聴きながらお菓子を食べるとか。

ざっくり見ると同時にやっていそうな行動は多いけど、“その一瞬”だけを見た場合、必ず一つのことしかやっていないことが分かる。

その証拠に、完全に同時に、2種類の情報を与える実験をするとよく分かる。

そう言えば、前に、サンドウィッチマンという芸人のコントで、「曲を2曲同時に流す」と言うのがあった。

僕はそれを聞いた時、全く何の曲か分からなかった。バラバラに聴けば両方とも知っている曲だったのにも関わらず。(実際はサザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」とチューブの「シーズン・イン・ザ・サン」だった)

「二台の機械を同時に一本のラインで作れ」と言ってもムリなのだ。

2種類の集中力

さて、ここまで心を、ライン作業のスタッフに見立ててお話してきた。スタッフ全員が同じ機械を組み立てている状態が集中力がある状態だった。

しかし・・・

スタッフにも、仕事を嫌々やる人と、仕事を前向きに楽しんでやる人がいるように、集中力にもネガティブな集中力と、ポジティブな集中力がある。

ネガティブな集中力

ネガティブな集中力とは、僕たちに幸せをもたらさない集中力という意味だ。ネガティブな集中力は、気づきや新しい発見をもたらさないだけでなく、僕たちの心を重くし、苦しめる。

ネガティブな要素は欲望、怒り、無智の3つがある。これらは仏教で三毒と言われていて、ネガティブの三大構成要素となっている。色の三元素のように。

欲望による集中力

例えば、「成功が欲しい」「名誉が欲しい」「地位が欲しい」といったような欲望にかられて行動するときに生まれるタイプの集中力だ。

世の中の集中力の多くが、このタイプに分類される。

僕も「アクセスが欲しい」という欲望で記事を書いたことがある。そのとき、書いている最中も心がモヤモヤして苦しいし、書き終わってからはドッと疲れが出たのを覚えている。

さらに後日書いた文章を振りかえってみると、全然一貫性がない内容だった。

怒りによる集中力

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よくあるのが、「自分をバカにした友人を絶対に見返してやる!」とかいう動機でものごとにはげむパターンだ。

「自分を捨てた男をキレイになって見返してやる」と言ってダイエットに励む女性とか。「自分をコケにした父親より稼いで、父親を尻に敷いてやる」と言って仕事に励む男性とか。

無智による集中力

無智とは「知恵がない」という意味だ。簡単に言うと、自分ではよく分からないけど、人から勧められたから必死でがんばりますみたいな感じだ。

例えば、昔、オウム真理教の地下鉄サリン事件というのがあった。地下鉄でサリンをまくのは悪い事だというのは子供にでも分かることだ。

でも、「教祖様に言われたから」という理由で、オウム真理教の信者たちは、サリンをまく計画に“集中”したわけだ。

以上3つがネガティブな集中力だ。見ての通り、ネガティブな集中力で努力しても、たいてい臨んだ結果は得られない。それは、ネガティブな集中力は一時のネガティブ感情によって生まれる集中力だからだ。

さらに、ネガティブな集中力で努力しても、それ自体が大きなストレスや疲労につながることも特徴だ。

というわけで、集中力を高めたいと思った場合、次のポジティブな集中力である必要がある。

ポジティブな集中力

ポジティブとは、ネガティブの逆だ。だから、これも3つある。

献身(無欲)による集中力

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献身とは、欲の反対のポジティブ感情になる。人に与える心のエネルギーだ。

例えば、川に流されている人を見かけたとしよう。その先には滝つぼがあって、放っておくと滝に飲まれてしまう。

あなたは川岸にいたとしたら、どうするだろうか?

おそらく、一も二もなく、「どうやったら、あの人を助けられるだろうか?」と考えを巡らし、行動に出るだろう。

そのとき、「今日帰ったら何食べよう?」とか「ああ景色綺麗だな~」とか、一切考えないはずだ。「この人を助けよう」ただそれだけに集中しているはずだ。これが献身の集中力だ。

思いやり(無怒)による集中力

思いやりとは、怒りと真逆の感情だ。人の幸せを願うポジティブな感情になる。

例えば、仏教には慈悲の瞑想という心の訓練がある。自分の幸せや人の幸せなどを願う訓練だ。

これを実践すると面白い事に、かなり高い集中力が得られる。このとき、心の中は思いやり一色になっていて、他の考え事は全くない状態になる。

智慧(無智)による集中力

智慧とは、無智の反対で、事実をあるがまま理解しているときのポジティブ感情になる。これは簡単に言うと「分かるのが楽しい」状態とも言える。

例えば、問題が解けるのが楽しくて夢中で勉強している子供などだ。

もっと高度な例で言うと、マインドフルネス瞑想をしているときに、普段気付かないような身の回りの現象に気づくときも「分かるのが楽しい」状態が生まれる。

このとき、とても高い集中力状態になる。

まとめ

集中力とは、「ある特定の対象に対して心がガチッと固定されている」状態だ。集中力にはネガティブな集中力と、ポジティブな集中力がある。

ネガティブな集中力とは次の3つだ。

  1. 欲望による集中力
  2. 怒りによる集中力
  3. 無智による集中力

ポジティブな集中力とは次の3つだ。

  1. 献身による集中力
  2. 思いやりによる集中力
  3. 智慧による集中力

ネガティブな集中力は、ネガティブ感情がベースにあるので、たいてい長続きしない。それに疲労やストレスの原因にもなる。さらには、ネガティブ感情に翻弄されて目的を見失いがちになる。

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