雑誌「わらいふ(2020秋号)」に記事を寄稿しました

生きがいの定義

「有意義であること」が大きな要素

最近では人生100年と言われるようになったが、そんな現代において、ひっきりなしに叫ばれる言葉がある。それが“生きがい”だ。あなたは「生きがい」と聞くと何を思い浮かべるだろうか?

おいしいご飯を食べること、集まってお話すること、死ぬまで仕事を続けること、大自然の中を旅行すること、本を読むこと、新しいことにチャレンジすること、世の中のために尽くすこと・・・

色んな意見があるかもしれない。ただ、改めてよく考えて欲しい。例えば、「おいしいご飯を食べること」と「世の中のために尽くすこと」は同じようにあなたに生きがいをもたらしてくれるだろうか?

そう問われると、おそらくあなたは違和感を感じるだろう。そして、あなたの違和感は正しい。「おいしいご飯を食べること」と「世の中のために尽くすこと」は、同じようにあなたに生きがいをもたらしてくれるわけではない。

では、何が生きがいの要素になるのだろう?それは、一言で言うと、「有意義であること」だ。有意義とは、自分または他人のためになるという意味だ。

解決された問題の量が多ければ有意義度も高い

「ためになる」とは、「自分または他人が昨日より幸せになる」ということだ。幸せになるとは、前号でも話したように、問題や悩みが解決されるということだ。

だから、あなたの起こした行動によって、あなた自身やあなたのまわりの人の問題が少しでも解決されたなら、その行動は有意義な行動だったと言える。つまり、その行動は生きがいをあなたにもたらしてくれる。

例えば、「おいしいご飯を食べる」という行動を考えてみよう。おいしいご飯を食べる食べることで、自分または他人が幸せになるだろうか? 全く幸せにならないとは言わないが、せいぜい食べたその瞬間だけちょっといい気分になる程度だ。その効果が翌日まで続くことはまずない。それに、あなた以外の人を幸せにしない。だから「おいしいご飯を食べる」という行動がもたらしてくれる生きがいは小さい。

人に尽くすことがポジティブ感情を増幅させる

次に、「世の中のために尽くすこと」を考えてみよう。あなたにもご経験があるように、誰か人のために尽くすというのは大きな幸せ感をもたらす。それは、人に尽くすことであなたの中で思いやりや優しさといったポジティブ感情が増幅するからだ。その幸せ感は、おいしいご飯を食べたときと比べ物にならないほど大きい。

さらに、尽くされた相手も、あなたと同じように大きな幸せ感を感じる。それに、あなたが尽くしたことで、相手の問題が解決すれば、あなたの行動は、相手に長きにわたって利益をもたらす。そのように考えると、「世の中のために尽くす」という行動は、大きな「生きがい」をあなたにもたらしてくれる。

このように自分の行っている日々の行動をぜひ分析して欲しい。そうやって少しずつ自分の行動を分析し、修正を加えていくことで、あなたの人生はどんどん生きがいに彩られていくはずだ。

(公認心理師)