From:堀口寿人
「コミュニケーション 意味」とグーグルで調べてみる。
すると、「気持・意見などを、言葉などを通じて相手に伝えること。通じ合い。」という意味が真っ先に出てくる。
まあ、想像通りと言おうか。その通りと言おうか。おそらく、あなたがこれまでコミュニケーションに対して持っている意味とほぼ同じだろう。
ただ、せっかくなので、今回コミュニケーションについて色んな角度から掘り下げてみようと思う。まずは、コミュニケーションの意味をもう少し具体的に見ていこう。
コミュニケーションの意味
ウィキペディアでの意味
ウィキペディアで、コミュニケーションの意味を調べると、次のように説明されている。
- 社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達
- (生物学)動物個体間での、身振りや音声・匂い等による情報の伝達
1番目は人間について、2番目は動物についてのコミュニケーションを説明している。では、次にアメリカ心理学会が出しているAPA心理学大辞典の意味を見てみよう。
APA心理学大辞典での意味
APA心理学大辞典でのコミュニケーションの意味はこうだ。
- 言語(口頭か書面)によるか、非言語的な手段(非言語コミュニケーション)による情報伝達のこと。人間は多くの対人関係や社会的な目的のために関わり、思考や知識、感情、経験を交換するために伝達する。
- 同様に、人間以外の動物も様々な目的のために音声的、あるいは非音声的な伝達をする(動物のコミュニケーション)
ウィキペディアと同じように、1番目は人間について、2番目は動物についてのコミュニケーションの意味を解説している。
言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションに関しては、字面で何となく意味がイメージできるかもしれないが・・・もし、詳しく知りたい場合は「コミュニケーションの種類一覧」を参考にして欲しい。
コミュニケーションの意味まとめ
つまり、コミュニケーションとは、「ある情報を何らかの手段で伝達・交換すること」と言えるだろう。
では・・・
- コミュニケーションでは、どんな情報を伝えるのだろうか?
- そして、どんな手段で伝えるのだろうか?
その辺を、具体的に見ていこう。
コミュニケーションで伝えるもの
さっきの、APA心理学大辞典の説明によると、伝えるものは「思考や知識、感情、経験」などだ。これらは、つまり次の2つに分類できる。
客観的情報
客観的情報には、知識、経験、思考などが該当する。
例えば、あなたが朝、天気予報を見たら、その日雨が降ることが分かった。そこで、家族に「今日は降水確率が100%らしい。傘が必要だね。」と言ったとしよう。
このときに伝えた情報が、客観的情報だ。あなたの個人的な思いは一切入っていない。
さらに、ここで言う“思考”というのは、「1+1=2です」というような、論理的な考え方のことを言う。同じ考えでも妄想とは違う。妄想は根拠がない主観的な情報だ。
客観的情報は、客観的な事実をベースにしているので、みんな共通の理解が持てる。例えば、「今日は雨が降る」と言えば、誰しもだいたい同じようなイメージをするだろう。
だから、客観的情報をやり取りする分には、それほど誤解やトラブルは起こらない。
主観的情報
それに対して、自分の個人的な思いが含まれた情報が、主観的情報だ。主観的情報には妄想や感情が該当する。
妄想というのは、例えば「たぶん、あの人は私の事を嫌ってると思う」という、個人的な思いのことだ。感情は、例えば「私甘いもの好きなんだよね」といった、個人的な思いだ。だいたい好き嫌いがベースにある。
主観的情報は個人的な体験をベースにしている。個人的な体験というのは一人一人全然違う。
例えば、あなたと僕が同じチョコレートを食べて、同じように「おいしい!」と感じたとしよう。でも、あなたの「おいしい」という感覚と、僕の「おいしい」という感覚は違う。
例えば、あなたは甘みを「おいしい」と感じていて、僕はほろ苦さを「おいしい」と感じているかも知れない。
というわけで、主観的情報はとても伝わりにくい。そのため、誤解やトラブルがよく起こる。
コミュニケーションで伝えるもの
コミュニケーションで伝えるものは、客観的情報と主観的情報の2つ。客観的情報とは客観的な事実をベースにした情報で、主観的情報とは個人的な体験をベースにした情報のこと。
では、これらの情報を伝える場合、どんな手段が考えられるだろうか?
コミュニケーション・チャネル
コミュニケーション・チャネルとは、“コミュニケーションが伝わる経路”というような意味だ。
例えば、コミュニケーションと言えば、「話した言葉を聞く」という形が一般的だ。この場合、「口→声→耳」というチャネルで表現できる。
実際、コミュニケーションには、「口→声→耳」以外にも色んなチャネルがある。チャネルは「発信チャネル」「媒体」「受信チャネル」の3つに分けられる。
発信チャネル
まずは発信チャネル。発信チャネルとは情報発信する部分のこと。発信チャネルは、次の3つある。
- 身体
- 口
- 脳
後で話すが、身体からは色んな情報を発信できる。例えば、ジェスチャー(見えるもの)、手をたたく音(聞こえるもの)、体の匂い(嗅げるもの)など。そういう意味で身体は情報発信チャネルの一つとみなせる。
口は、声という情報を発信する。心は、感情などの情報を発信する。
媒体
次に媒体だ。発信チャネルから受信チャネルに情報を伝えるには、何らかの媒体が必要になる。
例えば、あなたと僕がケータイでお話するとしよう。それで、お互いにケータイを持ってスタンバイしているとしよう。でも、もしお互いの間に“電波という媒体”がなければ、あなたと僕はお話しできない。
人のコミュニケーションでも同じだ。媒体は次の6つになる。
- 光・・・見えるもの
- 音・・・聞こえるもの
- 臭い・・・嗅げるもの
- 味・・・味わえるもの
- 堅さ・熱・・・触れられるもの
- 心・・・感情など
最後の“心”というのがよく分からないかもしれない。もしかして、「人は心を発信しているのか?」と疑いたくなるかもしれない。
でも、人は間違いなく心を発信している。例えば、イライラした人の近くを通っただけで、「この人はイライラしている」と分かった経験はないだろうか?表情も何も全く見ていないのに。
こういうことは、全然不思議じゃない。僕たちには人の感情を感じられるようなセンサーがあると思っていい。
受信チャネル
最後に受信チャネルだ。発信チャネルから送られてきた媒体をキャッチするチャネルだ。受信チャネルは、次の6つある。
- 視覚・・・見えるものを受信
- 聴覚・・・聞こえるものを受信
- 嗅覚・・・嗅げるものを受信
- 味覚・・・味わえるものを受信
- 触覚・・・触れられるものを受信
- 脳・・・感情などを受信
6つの媒体と対応するように6つある。
コミュニケーション・チャネルまとめ
これらの3つの要素を組み合わせると、次のようなチャネルが考えられる。
- 身体→心以外→脳以外
- 口→音→聴覚
- 脳→心→脳
身体からは、心(感情)以外の全ての媒体を発信できる。それに応じて、対応する受信チャネルで受信するという形だ。
これが、人間がとりうる全てのコミュニケーション・チャネルになる。
主観的情報のコミュニケーションの目的
ここまでで、コミュニケーションの意味について分かったことをおさらいしょう。
コミュニケーションで伝える情報は、客観的情報と主観的情報の2種類。この2種類の情報を色んなチャネルを使って伝達し合うわけだ。
ここで思い出してほしい。客観的情報のコミュニケーションはあんまり問題にならないとお話した。問題になるのは、主観的情報のコミュニケーションだ。
主観的情報は、個人の体験に基づいているので、ほとんど情報を共有できない。「相手はたぶんこう思っているだろう」と推測するのが関の山だ。
でも、僕たちは主観的情報のコミュニケーションが大好きだ。じゃあ、なぜ僕たちは主観的情報のコミュニケーションをしたがるのか?
その目的を最後に確認しておこう。これを理解しておけば、コミュニケーションのトラブルは大幅に減るだろう。
自分を理解して欲しい
あなたは自分を理解して欲しいと思ったことはあるだろうか?もし、あるとしたらなぜそう思ったのだろうか?
答えを言ってしまうと、相手を自分の思うようにコントロールしたいからだ。
どういうことか?
もし、あなたが「自分を理解して欲しい」と思ったら、その時点で相手に求められる行動は何だろう?
おそらく、あなたに対するねぎらい、共感、優しい言葉などだろう。決して、批判、非難、無関心などではないはずだ。
つまり、「自分を理解して欲しい」ということは、「自分をねぎらって欲しい」「自分に共感を示して欲しい」「元気が出る言葉をかけて欲しい」という意味なわけだ。相手にそういう行動をとって欲しいわけだ。
これは言いかえると、相手を自分の思うようにコントロールしたいとは言えないだろうか?
相手を理解したい
次に、「相手を理解したい」だけど、これはなぜこう思うのだろうか?そもそも相手を知ることでメリットがあると思われるのは誰だろうか?
そう。自分だ。
結局「相手を理解したい」というのも、相手を自分の意のままにコントロールしたいという気持ちが裏にあることが分かる。
主観的情報のコミュニケーションの目的まとめ
主観的情報のコミュニケーションは次の2つの目的でとられることが多い。
- 自分を理解して欲しい
- 相手を理解したい
この2つの目的は、どっちも“相手の都合”が抜け落ちているのが分かる。つまり、“自分都合の”コミュニケーションということだ。
まとめると、主観的情報のコミュニケーションは、自分都合で相手をコントロールする目的でなされることが多いという事だ。
でも、残念なことに、他人からコントロールされたい人は一人もいない。だから、主観的情報のコミュニケーションはトラブルを招きやすい。
まとめ
コミュニケーションとは、「ある情報を何らかの手段で伝達・交換すること」という意味だ。
ある情報とは、客観的情報と主観的情報の2種類。手段とは、複数のコミュニケーション・チャネルを意味する。
客観的情報のコミュニケーションは客観的事実がベースになっているため、人の誤解やトラブルを生むことは少ない。
しかし、主観的情報のコミュニケーションは、個人的体験がベースになっているため、人の誤解やトラブルを生みやすい。