From:堀口寿人
桜の花びらを一片そえて
今回の記事は、正直まとめるのが大変だった。
というのも、リーダーシップにはとらえ方によって色んな意味が含まれるからだ。
辞書で調べると、「統率力」という意味が出てくる。確かに、この意味が一般的だが、そもそも「統率力って何じゃ?」という話なのだ。
ヒトラーだって、多くの人を従わせたという意味では統率力があると言えるだろう。また、お釈迦さまも多くの人の人生を幸せに導いているという意味で統率力があるだろう。
でも、この2つの統率力は明らかに違う。だから、「リーダーシップとは統率力という意味だ」と簡単にすませられない。
だから、今回リーダーシップの意味を考えるために、「あなたがあるチームのメンバーという前提」で意味を考えていこうと思う。
ちなみに、チームとは、会社かも知れない、家族かも知れない、友人関係かもしれない、地域社会かも知れない、地球全体かも知れない。それは、適宜あなたの状況に合わせて考えて欲しい。
まず、リーダーシップの言葉の意味を考えてみよう。
リーダーシップとはどんな意味?
リーダーは導く人という意味だ。だから、リーダーシップは「導く力」みたいなイメージになる。
じゃあ、どこに導くのか?
それは、自分やチームや社会を望ましい方向にだ。
じゃあ、望ましい方向って?
それは、幸せになる方向だ。
つまり、リーダーシップの意味とは、メンバー、チーム、社会のすべてが幸せになる方向にチームを導く力の事だ。
そして、そのためには
- メンバー一人一人が同じ方向を向くこと
- メンバー一人一人がお互いに協力し合うこと
- メンバー一人一人の心理状態がポジティブになること
- メンバー一人一人が成長すること
が必要だ。そして、この4つの状態を作っていく力がリーダーシップだ。
メンバー一人一人が同じ方向を向くこと
まず、せっかくチームを組んでいるのだから、メンバー一人一人がバラバラの方向を向いていたら、チームとして機能しない。
チームが機能するためには、同じビジョンに向けて行動しなければならない。
そのためにはメンバーの価値観もそろえておく必要がある。
ビジョンや価値観に関して詳しくは「ビジョンの本当の意味とは?」を参考にしてもらえるとよく分かる。
メンバー一人一人がお互いに協力し合うこと
メンバーがみんな同じ方向を向いていても、お互いにチームワークがないと、真の力を発揮できない。
バスケットボールの最高峰と言えば、NBAだ。そのNBAの中でもトップスターを集めて、最高のチームを作っても、一般的なNBAのチームよりも成績が劣ると聞いたことがある。
一人一人を見れば、この上ない選手なのに、ことチームとなると振るわなくなるのはなぜだろう?
それこそが、チームワークが欠けているからだ。
メンバー一人一人の心理状態がポジティブになること
チーム全体として同じ方向を向き、協力し合っても、個人個人の心理状態がネガティブであれば意味がない。
どうしてもチームで動いている以上、
- 言われたくない一言を言われた
- 本当は言いたい一言を言えない
- 誤解によって仲が悪くなった
ということは起こるものだ。だからチームにネガティブな心理状態はつきものだ。それをポジティブに変えるのも、とても重要なリーダーシップだ。
というのも最初に言ったように、リーダーシップとはメンバー、チーム、社会のすべてが幸せになる方向に導く力のことだからだ。
僕は、昔、社員を奴隷のように働かせる、社長の下で働いたことがある。何が奴隷かと言うと、シャツの洗濯や、自分の自宅の車庫の掃除など、プライベートなことも全部社員にさせるわけだ。
「お金を払っているんだから別にいいでしょ?」って感じなわけだ。まるでロボットのような扱いだった。
こんな状況で当然、社員の気持がポジティブに向くことはない。その会社では、いつも社員の不平が聞こえていた。
権力を振りかざすこととリーダーシップ全く違う。
メンバー一人一人が成長すること
最後に、一人一人がポジティブになっても、一人一人が成長していかないと、いつも同じ問題でつまづくことになる。
失敗しても「まあいいか!人間だから、そういうこともあるよ(笑)」と笑い飛ばすポジティブさは大切だ。
でも、いつも同じ失敗していては、チームとしての未来はない。
以上の4つの状態がつくる力がリーダーシップだ。ちなみに、この4つの状態を作るのは必ずしもチームのトップである必要はない。
あなたがチームのトップであれ、そのチームに所属してまだ1ヶ月の新人であれ、この4つの状態を作るために、できることが必ずあるはずだ。
それに責任を持って取り組めているなら、あなたはリーダーシップを発揮しているわけだ。
じゃあ、この状態を作るために、具体的にどんなリーダーシップが必要か?
今から、この状態をつくるために必要な10のリーダーシップと、その意味を解説する。
10のリーダーシップ
リーダーシップ1:ビジョンを示す
リーダーシップの一つ目はビジョンを示すことだ。ビジョンとは、まさしくさっき話した「メンバー、チーム、社会のすべてが幸せになる未来」のことだ。
ただ、未来イメージを描けば何でもビジョンかというとそうじゃない。
ビジョンには未来イメージに加えて、価値観が反映されている必要がある。ちなみに価値観とは「これは絶対にゆずれないというくらい大事にしているもの」だ。
例えば、僕の場合だと「人間たるもの、日々成長すべきだ」という価値観を持っている。
そして、その価値観に基づいて、僕には「誰もが自分の思い通りの思い込み、考え方、行動、人生を手に入れられる世の中」というビジョンがある。
もちろんそういうビジョンを実現するためには、世の中の一人一人が自己成長に目覚め、より幸せになる決意をする必要がある。
そして、そのビジョンのために、僕は日々メッセージを発信したり、新しい心理プログラム開発に取り組んでいるわけだ。
だから、僕のこのビジョンに同調してくれる人たちにとって、僕はリーダーシップを発揮しているわけだ。
もし僕が全くビジョンを持たずに、この記事を書いていたら、単なる趣味ブログのようなものになっているはずだ。それはとてもリーダーシップとは呼べない。
リーダーシップ2:理解する
チームメンバーを理解することだ。理解するとは、勝手に判断することじゃない。
相手の頭の中のイメージを、そっくり自分の頭にコピーすることだ。そのためには、相手の話を判断を入れずにじっくり聞いてあげる必要がある。
これが意外と難しいのだ。
というのも、僕たちはすぐに人の意見を聞いたら、自分の意見をかぶせて、塗り替えようとしてしまう癖があるからだ。それだけ僕たちはもともとは自分勝手だということだ。
本当に相手の立場で聞いてあげられた時、あるがままの相手の気持ちが分かる。その上、相手も、自分をしっかり理解してくれた、あなたに好意を持つものだ。
「聞く」ということは、「あなたを全面的に受け入れていますよ」という暗黙のメッセージなわけだ。それが相手にも伝わる。
リーダーシップ3:信頼する
信頼するとは、「相手ができる」と信頼してあげることだ。それは例えば、「信頼して相手に仕事を任せる」という形をとるかもしれない。「黙って相手の言うことに納得する」という形をとるかもしれない。
例えば、信頼して仕事を任せる場合は、ある一定の権限を与えてメンバーに仕事をしてもらうわけだ。もちろんそのリスクはあなたが請け負うことになる。
あなたがリスクを背負うほど、相手は「こんなに自分のことを信頼してくれてるんだ!」と感じる。
ちなみに信用と信頼は違う。信用は、条件付きで信じることで、信頼は無条件で信じることだ。
残念なことに、親でも子供を信頼できている人はほとんどいない。
一度テストで悪い点を取ってきたら信頼する代わりに、心配するわけだ。そして「お前のために心配している」と付け加える。
子供からすればいい迷惑だ。子供は心配して欲しいと全然思っていない。子供が欲しいものは信頼だ。親だからこその信頼。
信頼は相手にとって限りないパワーになる。信頼すればそれは言葉や行動・表情ににじみ出る。そして相手はこう思う。「こんな自分を信頼してくれてありがたい。自分もこのチームのために頑張ろう。」
リーダーシップ4:尊重する
メンバーを、「チームメンバー」として一くくりにするんじゃなくて、一人一人の個人としてみなすということだ。
メンバーには、みんな一人一人個性があり、歩んできた人生があり、自分の考えがある。それを「大勢の中の一人」として扱われたら誰だって面白くない。
相手の歩んできた人生、人柄を尊重して扱うことで、相手の自己重要感が高まる。そして、あなたは自己重要感を高めてくれた人になる。
リーダーシップ5:褒める
いい部分をきちんと褒めてあげるのも重要なリーダーシップだ。従来の考えに「褒めるとつけ上がるから、たたいて伸ばす」という考え方がある。
そういうやり方をされても、やる気を起こす人もいる。ただ、その時のやる気はネガティブから来るもので決して望ましくない。
- 相手を見返すために
- いつか立場を逆転させて、尻に敷いてやる
というエネルギーで仕事をして、例え成果が上がっても、ポジティブな心理状態は絶対に生まれない。
リーダーシップ6:励ます
励ますとは、「大丈夫。君ならできるよ!」とやる気を出させることだ。
チームで動いていると、必ず失敗にぶち当たってくじける人が出てくる。そんな後ろ向きになった人の気持を前に向かせるのも重要なリーダーシップだ。
これは決して「やらないと殴るぞ」と脅すことではない。
仮に脅して相手が奮起したとしても、やっぱりそこに生まれるのはネガティブなエネルギーだからだ。
チームメンバーを動かして成果さえ出せれば、何でもリーダーシップなわけじゃない。メンバーの心理状態がポジティブになることがリーダーシップの大前提だ。
リーダーシップ7:与える
これは、「メンバーのために自分は何をしてあげられるだろう?」という姿勢だ。それは物をあげることかも知れないし、知識を教えることかも知れないし、情報をあげることかも知れない。
多くの人は、新しい出会いがあると、ついこう考える。
「この人から自分は何を得られるだろう?」
この考えは、貧しい心から生まれるネガティブな考えだ。そう感じないかもしれないが、実際そうなのだ。
「メンバーのために自分は何をしてあげられるだろう?」これは、いつも呪文のように自分に言い聞かせる必要がある。
リーダーシップ8:平等に扱う
これは、リーダーシップの中でも特に重要な概念だ。というのも、リーダーシップをはる人はよく「自分は特別だ」とか「自分は偉いんだ」と自分をみなしがちだからだ。
でも、実際はそうじゃない。相手より絶対的に偉い人なんて存在しないからだ。
例えば、あなたは小学生よりも長生きしていて、小学生よりも人生経験が豊富だろう。
だからといって、どんな分野でも小学生より優れていると言い切れるだろうか?
そんな事はないはずだ。実際に小学生に見習う場合もあるのだ。小学生の方が正しい場合もあるのだ。
だから、自分の意見が偉大で絶対的に正しいというのは、完全な邪見だ。あり得ない。むしろ、そう思った時点で、その人はもう偉くないのだ。
いつだって僕たちの意見は間違っているかも知れないし、正しいかもしれない。同じように、いつだって相手の意見は間違っているかも知れないし、正しいかもしれない。
だから、自分の意見や存在だけを特別視してはいけない。天から見れば、あなたも相手も大差のない能力を持った人間なのだから。
リーダーシップ9:手本を示す
これは、「まずあなたがチームメンバーの一人として理想的な存在であれ」ということだ。
例えば、前にテレビで、子供に「お菓子は一個まで」ときつくしつけている母親を見た。
でも、そう子供に言ったあと、その母親は自分のためのアイスを20個ほどカゴに入れていたのだ。
これは明らかに手本としてはふさわしくない。「子供にお菓子を買う力がないのをいい事に、何て母親だろう」と思ったのを覚えている。
「自分は親だから」「自分は管理職だから」というのは理由にならない。それじゃメンバーは納得しない。
親だからリーダーシップがあるわけじゃない。管理職だからリーダーシップがあるわけじゃない。
チームの中で自分のやるべきことを責任を持ってきちんとこなし、まわりに対しての規範を示せることこそリーダーシップなのだ。
リーダーシップ10:確信を持つ
この確信とは、自分たちの活動によって、必ずメンバー、チーム、社会のすべてが幸せになっていくという確信だ。
例えば、僕の場合、「人々が自分の持っている思い込みをもし自由に変えられるとしたら、人々は自分の望む自分になれる。」という確信がある。
そして、「誰もが、自分が望む自分になりたいと思っている。その方法を知りたいと思っている。」という確信がある。
そして、確信は熱意を呼ぶ。「絶対にそうなるんだ!間違いない!」という熱意を。その熱意が人を巻き込むわけだ。
まとめ
- 一人一人の心理状態がポジティブになること
- 一人一人が成長すること
- チームが同じ方向を向くこと
- チームがお互いに協力し合うこと
チームに対してこの4つの状態を作り出す力こそが、本当のリーダーシップの意味だ。
そうすることで、チームは同じ方向を向いて一丸となり、メンバー一人一人の気持もポジティブでやる気が満ちている状態が作れる。
最後にもう一つ
この写真の人物をご存知か?
山本五十六。戦時中、にありながら、愛や平和を尊んだ人格者である。彼は元帥という軍隊の最高位にあって、誰よりも戦争を避けようと努力した人だ。そんな彼がこんな言葉を残している。ここにリーダーシップのあり方が集約されている。
この偉大な先人の言葉をリーダーシップの締めくくりとする。
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」
「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」
「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」