ジタハラとは?ジタハラをゼロにする5ステップ

もしあなたの会社で「ジタハラ(時間短縮ハラスメント)」という言葉が出ているとしたら、それは、黄色信号です。

働き方改革の影響で皮肉にもこのジタハラが広まることになってしまいました。

今回は、ジタハラの実態と影響を明らかにし、その対策について詳細に説明していきます。

1. ジタハラとは

1-1 ジタハラとは

ジタハラ、正式には「時間短縮ハラスメント」と言います。これは、労働時間の短縮や効率化を過度に求めることで、従業員に精神的・身体的な負担をかけるハラスメント行為を指します。

厚生労働省が2019年に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、約30%の労働者が何らかのハラスメントを経験していると回答しています。

この中には、ジタハラも含まれているんです。

1-2 ジタハラが生まれた背景

ジタハラが注目されるようになった背景には、日本の労働環境の変化があります。

2018年に成立した「働き方改革関連法」により、企業は従業員の労働時間管理をより厳格に行うことが求められるようになりました。

連合総研(公益財団法人連合総合生活開発研究所)の「第44回勤労者短観」(2022年10月実施)によると、働き方改革関連法施行後の変化について、「労働時間が減少した」と回答した人は21.9%、「年次有給休暇を取得しやすくなった」と回答した人は27.3%にとどまっています。

つまり、多くの企業が労働時間の削減にばかり注目し、業務プロセスの根本的な見直しができていない状態にあります。

その結果、従業員は同じ仕事量をより短い時間で処理するよう求められ、ストレスを感じるようになった。これが、ジタハラ問題の本質なんです。

1-3 ジタハラの具体例

では、実際にどのような行為がジタハラに該当するのか、具体例を見てみましょう。

  1. 残業禁止を厳格化しながら、業務量は減らさない
  2. 休憩時間を実質的に削減し、その分早く帰るよう強要する
  3. 「効率化」の名目で、無理な短納期を要求する
  4. 時間内に終わらない従業員を「能力不足」と決めつける

ここまで読んで、「もしかして自分の職場も…」と思った方もいるかもしれません。でも、心配しないでください。ジタハラの存在に気づくことが、解決への第一歩なんです。

次の章では、ジタハラの特徴について、より詳しく見ていきます。パワハラとの違いや、成果主義との関連性など、意外な事実が待っていますよ。

2. ジタハラの特徴

前章でジタハラの概要を見てきましたが、ここではその特徴をより詳しく掘り下げていきましょう。ジタハラは一見すると効率化を促進しているように見えますが、実はさまざまな問題を内包しています。

2-1 パワハラとの違い

ジタハラは、パワハラの一種と考えられることがありますが、実は明確な違いがあります。

厚生労働省の「令和2年版 労働経済の分析」によると、パワハラは「優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害すること」と定義されています。

一方、ジタハラは必ずしも優越的な関係を前提としません。ジタハラが同僚間でも発生し得るんです。

つまり、上司から部下へのパワハラとは異なり、ジタハラは組織全体の文化や制度から生じる可能性が高いわけです。

2-2 成果主義との関連

ジタハラと成果主義と密接な関連があります。

多くの日本企業が1990年代後半から2000年代にかけて成果主義を導入しました。しかし、この成果主義が予期せぬ形でジタハラを助長してしまったんです。

というのは、成果を重視するあまり、プロセスや労働時間が軽視されてしまったからです。「結果さえ出せばいい」という考え方が、従業員に過度なプレッシャーをかけ、結果的にジタハラにつながってしまうわけです。

2-3 認識の差

ジタハラの大きな特徴の一つが、加害者と被害者の間の認識の差です。これが、問題をより複雑にしているんです。

例えば、上司は「仕事の効率を上げるためのアドバイス」のつもりで言った言葉が、部下には「無理な要求」として受け取られてしまうケースですね。

この認識の差が、ジタハラ問題をより深刻にしている一因と言えるます。

さらに、この認識の差が年齢や勤続年数によっても異なります。例えば、若手社員ほどジタハラを敏感に感じる傾向があるのに対し、ベテラン社員は「仕方ない」と諦めてしまう傾向が強いんです。

この認識の差は、世代間のコミュニケーション問題とも密接に関連しています。若手とベテランの価値観の違いが、ジタハラの認識にも影響を与えているんですね。

ここまで読んで、あなたはどう感じましたか?もしかしたら、自分の職場でも似たような状況があるかもしれません。でも、大丈夫です。問題の本質を理解することが、解決への第一歩なんです。

次の章では、このジタハラが実際にどのような影響を及ぼすのか、具体的なデータを交えながら見ていきましょう。

3. ジタハラの影響

前章までで、ジタハラの定義や特徴について見てきました。では、このジタハラは実際にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

ここでは、具体的なデータを交えながら、ジタハラが個人と組織に与える影響について詳しく見ていきましょう。

3-1 メンタルヘルスへの影響

ジタハラが従業員のメンタルヘルスに深刻な影響を与えていることが、複数の研究で示唆されています。

厚生労働省の「令和2年版 過労死等防止対策白書」では、労災認定された精神障害の出来事別件数において、「仕事の量・質の変化を生じさせる出来事があった」というカテゴリーが全体の約15%を占めています。この中には、ジタハラによる影響も含まれていると考えられるんです。

つまり、「効率化」や「生産性向上」の名の下に行われるジタハラが、従業員の心の健康を著しく損なっている可能性が高いんですね。

3-2 離職への影響

ジタハラ(時間短縮ハラスメント)は、従業員の離職意向に大きな影響を与える可能性があります。

過度な時間的プレッシャーや非現実的な期待にさらされ続けることで、従業員は精神的・肉体的に疲弊していきます。

この状況が続くと、仕事への意欲低下や職場への不信感が生まれ、最終的には離職を考えるきっかけとなるかもしれません。

特に若手社員にとっては、キャリアの初期段階でこのようなネガティブな経験をすることで、現在の職場だけでなく、仕事そのものに対する見方にも影響を与える可能性があります。

結果的に、別の職場を探そうと、なる可能性も十分にあります。

組織にとって、人材の流出は大きな損失です。特に、育成に時間とコストをかけた有能な人材を失うことは、長期的な競争力の低下につながる可能性があります。

3-3 採用への影響

ジタハラ(時間短縮ハラスメント)の問題は、既存の従業員だけでなく、企業の採用活動にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

近年、就職活動中の学生や転職を考えている社会人の間で、企業の労働環境や働き方に対する関心が高まっています。

彼らは給与や福利厚生だけでなく、実際の働き方や職場の雰囲気も重視する傾向にあります。

このような状況下で、ジタハラが蔓延している企業は、優秀な人材の獲得において大きなハンデを負う可能性があります。

例えば、就活生が企業研究をする際、社員の口コミやSNSでの評判を重視することが増えています。

ジタハラの問題が表面化した場合、そうした情報網を通じてネガティブな評価を受け、応募者が減ってしまう可能性があります。

また、採用面接の場でも、ジタハラの問題は表面化する可能性があります。面接官の言動や質問内容から、企業の働き方に対する姿勢が垣間見えることがあります。

もし面接官が無意識のうちにジタハラを示唆するような発言をしてしまえば、優秀な候補者に敬遠されるリスクがあります。

長期的な視点で見れば、ジタハラの問題は企業の評判や雇用ブランドにも悪影響を及ぼします。優秀な人材を継続的に採用できない企業は、徐々に競争力を失っていく可能性があります。

4. 実態把握の手法

ジタハラ(時間短縮ハラスメント)の問題に効果的に対処するためには、まず組織内での実態を正確に把握することが不可欠です。ここでは、ジタハラの実態を把握するための主要な手法について詳しく見ていきましょう。

4-1 アンケート調査

アンケート調査は、組織全体のジタハラの実態を広く把握するのに適した手法です。効果的なアンケート調査を実施するためのポイントは以下の通りです:

匿名性の確保:回答者が特定されないよう配慮することで、より率直な回答を得られます。

具体的な質問設定:「無理な締め切りを強いられたことがありますか?」など、具体的な状況を例示することで、回答者の理解を助けます。

頻度や程度の把握:「週に何回程度経験しましたか?」など、問題の深刻度を測る質問を含めます。

オープンエンド質問の活用:自由記述欄を設けることで、アンケートの選択肢だけでは捉えきれない問題を把握できます。

アンケート結果の分析では、部署別や役職別の傾向を見ることで、組織のどの部分でジタハラが発生しやすいかを特定できる可能性があります。

4-2 面談の活用

個別面談は、アンケートでは捉えきれない細かな実態や個人の感情を把握するのに有効です。効果的な面談を行うためのポイントは以下の通りです:

定期的な実施:四半期に一度など、定期的なスケジュールを組むことで、経時的な変化を捉えられます。

中立的な聞き手:直属の上司ではなく、人事部門や外部のカウンセラーが担当することで、より率直な意見を引き出せます。

オープンエンドの質問:「最近の業務で困っていることはありますか?」など、自由に話せる質問を用意します。

傾聴:相手の話をしっかりと聞き、共感的な態度で接することで、信頼関係を構築します。

また、「1on1ミーティング」のような、上司と部下が定期的に1対1で対話する機会も、ジタハラの早期発見に役立つ可能性があります。

4-3 外部評価の導入

内部での調査だけでなく、外部の専門家による評価を導入することも、客観的な実態把握に有効です。外部評価を活用する際のポイントは以下の通りです:

専門家の選定:労務管理やハラスメント対策に詳しい専門家を選びます。

継続的な実施:単発ではなく、定期的に評価を受けることで、改善の進捗を確認できます。

結果の公開:従業員に評価結果を公開し、改善への意識を高めます。

アクションプランの作成:評価結果を基に、具体的な改善計画を立てます。

外部評価は、組織の盲点を指摘してくれる可能性があり、新たな視点を得るきっかけになるでしょう。

これらの手法を組み合わせることで、より包括的にジタハラの実態を把握することができます。ただし、実態把握はあくまでも始まりに過ぎません。

次の重要なステップは、把握した実態を基に具体的な対策を講じることです。

次章では、ジタハラゼロを目指すための具体的な施策について詳しく見ていきます。実態把握で得た情報を基に、どのような対策を講じるべきか、一緒に考えていきましょう。

5. ジタハラゼロへの施策

ジタハラ(時間短縮ハラスメント)の問題を解決し、健全な職場環境を作るためには、組織全体で取り組む必要があります。ここでは、ジタハラゼロを目指すための具体的な施策について詳しく見ていきましょう。

5-1 方針策定

ジタハラ対策の第一歩は、明確な方針を策定することです。この方針には以下の要素を含めるべきでしょう:

  1. ジタハラの定義と具体例
  2. 会社としての姿勢(ジタハラ禁止の宣言)
  3. 従業員の権利と責任
  4. 相談・通報の仕組み
  5. 違反者への対応

方針策定のポイントとしては、以下が挙げられます:

  1. トップのコミットメント:経営トップ自らが方針を発信することで、組織全体の意識を高めます。
  2. 具体性:抽象的な表現を避け、具体的な行動指針を示すことで、理解を促進します。
  3. 定期的な見直し:社会情勢や法改正に合わせて方針を更新し、常に最新の状態を保ちます。

5-2 業務改革

ジタハラの根本的な解決には、業務プロセスそのものの見直しが不可欠です。業務改革のアプローチとしては、以下が効果的です:

  1. 業務の可視化:各タスクにかかる時間を測定し、無駄を特定します。
  2. ITツールの活用:RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等を導入し、定型業務を自動化します。
  3. 会議の効率化:会議の目的を明確にし、時間を制限します。
  4. 優先順位の明確化:重要度と緊急度のマトリックスを活用し、タスクの優先順位を決定します。

これらの取り組みにより、不必要な時間的プレッシャーを減らし、ジタハラの発生を予防することができます。

5-3 コミュニケーション強化

ジタハラの多くは、コミュニケーション不足から生じています。コミュニケーション強化のための具体的な施策としては、以下が挙げられます:

  1. 1on1ミーティングの定期開催:上司と部下が定期的に対話する機会を設けます。
  2. オープンな質問タイムの設定:週1回の「何でも相談会」など、自由に意見を言える場を作ります。
  3. 匿名フィードバックシステムの導入:匿名で意見や提案を提出できる仕組みを整えます。
  4. アサーティブコミュニケーション研修の実施:自他を尊重した適切な自己主張の方法を学ぶ機会を提供します。

これらの施策により、職場内のコミュニケーションを活性化し、ジタハラの早期発見と予防につなげることができます。

5-4 評価制度の見直し

ジタハラを助長しない評価制度の構築も重要です。評価制度見直しのポイントとしては、以下が挙げられます:

  1. 多面評価の導入:上司だけでなく、同僚や部下からの評価も取り入れます。
  2. プロセス評価の重視:結果だけでなく、どのように業務を遂行したかも評価します。
  3. 定性的評価の導入:数値化できない貢献(チームワーク向上など)も評価対象とします。
  4. 長時間労働の是正:残業時間の多さを評価しない仕組みを作ります。

これらの取り組みにより、時間的プレッシャーに頼らない健全な評価制度を構築することができます。

5-5 教育プログラムの実施

最後に、ジタハラに関する理解を深めるための教育プログラムの実施が不可欠です。効果的な教育プログラムの特徴としては、以下が挙げられます:

  1. ケーススタディの活用:具体的な事例を用いて、何がジタハラに該当するかを学びます。
  2. ロールプレイング:加害者・被害者の立場を疑似体験し、理解を深めます。
  3. e-ラーニングの導入:時間や場所の制約なく学習できる環境を整えます。
  4. 定期的な実施:年1回以上の頻度で研修を行い、継続的な意識向上を図ります。

これらの教育プログラムを通じて、組織全体のジタハラに対する理解と意識を高めることができます。

以上の施策を総合的に実施することで、ジタハラのない健全な職場環境の実現に近づくことができるでしょう。

もちろん、これらの取り組みは継続的に行っていかないと何の意味もありません。それに組織の規模や文化によって、最適なアプローチは違ってきます。

自社の状況に合わせてこれらの施策をカスタマイズし、粘り強く取り組んでいくことが、ジタハラゼロへの道となるでしょう。

まとめ

さて、ここまでジタハラについていろいろ見てきました。定義から特徴、影響、実態の調べ方、対策まで。

わかったのは、ジタハラって本当に厄介な問題だってことです。社員のメンタルヘルスを悪くしたり、会社を辞めたくなる原因になったり。さらには、新しい人材の採用にも悪影響があるかもしれないんです。

それで、今すぐできる対策も色々あることが分かってもらえたかと思います。ジタハラをなくすには、他の問題と同じように、そういった対策に粘り強く取り組んでいく必要があるんです。

ジタハラをなくすことは、社員にとっても会社にとってもプラスになります。これがいいきっかけです。あなたの会社でも、自分の職場でできることから始めてみませんか?

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